ヨーロッパ近代初期の都市交通機関の一つで,定められた場所で客を待ち,客に指示されたところまで走行し運賃をとる二輪馬車のこと。現在のタクシーの前身である。辻馬車は貸馬車から派生したもので,辻馬車を指すフィアークルという言葉は,パリで1640年ころに貸馬車業を始めたニコラ・ソバージュなる人物が住み,その営業を行った,サンタントアーヌ街のサン・フィアークルの館に由来している。本来,貸馬車は半日とか1日,あるいは1週間とか1ヵ月と長期にわたり馬車を貸し出す商売であったが,街路の特定の場所に二輪馬車を用意して客を待ち,市内の指示されたところまでおもむく貸馬車を,後々までとくにフィアークルと呼び,それが辻馬車として特殊化したのである。そして19世紀初頭キャブリオレcabrioletという軽装二輪馬車が生まれたが,これは1820年ころイギリスにはいり,キャブと呼ばれる辻馬車となった。19世紀初頭の乗合馬車の発展によって辻馬車はおされぎみとなり,安全性や公衆衛生の面で当局からしばしば問題視された。
→馬車
執筆者:喜安 朗
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
…パスカルもアケhaquetといわれる二輪馬車を考案しているが,とくに6人乗りの乗合馬車を考案したことで知られる。ルイ14世のときには,N.ソバージュの考案による時間ぎめの辻馬車がパリに現れ,フィアクルと呼ばれた。ロンドンでも,1625年に辻馬車が現れている。…
※「辻馬車」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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