退院時薬剤情報提供書(読み)たいいんじやくざいじょうほうていきょうしょ

日本大百科全書(ニッポニカ) 「退院時薬剤情報提供書」の意味・わかりやすい解説

退院時薬剤情報提供書
たいいんじやくざいじょうほうていきょうしょ

患者の退院時に、医療機関から保険薬局等に対し、退院患者にかかわる薬剤等の情報を提供するための文書

 厚生労働省が策定した「患者のための薬局ビジョン」(平成27年10月)では、「かかりつけ薬剤師・薬局」がもつべき三つの機能の一つとして、「服薬情報の一元的・継続的な把握とそれに基づく薬学的管理・指導」があげられており、「医療機関と薬局の間で、情報提供文書の使用、処方箋(せん)・お薬手帳への記載等を通じ、臨床検査値や疾患名等の患者情報の共有を図る取組を更に進めることが必要である」とされている。

 日本薬剤師会は「薬剤師の将来ビジョン(平成25年4月)」のなかで、薬局・病院薬剤師の情報の伝達と共有化の手段として、「お薬手帳」「退院時服薬指導書」「薬剤適正使用のための施設間情報連絡書」の活用をあげている。また、日本病院薬剤師会は、「地域医療連携の手引き(令和2年4月)」のなかで、退院時には、「お薬手帳」や「施設間情報連絡書(薬剤管理サマリー)」を用いて、次に患者を受け持つ医療・介護従事者への情報伝達を図ることを推奨している。

 2020年度(令和2)診療報酬改定では、医療機関から保険薬局に対する情報提供の評価として、退院時薬剤情報管理指導料の「退院時薬剤情報連携加算」が新設された。これは、入院前の処方薬の内容に変更や中止の見直しがあった患者の退院時に、見直しの理由や見直し後の患者の状態等を薬局に文書で情報提供した場合に算定できるものであり、その様式として上記「薬剤管理サマリー」等を参照して文書を作成するよう通知されている。「診療情報提供書」が医療機関(かかりつけ医)への情報提供を評価するのに対し、この加算は薬局(かかりつけ薬局)への情報提供を評価するものである。高齢者の多剤服用のなかでも害をなすものは、とくにポリファーマシーとよばれており、ポリファーマシーを解消し高齢者に対する医薬品の適正使用を図る対策の一環として効果が期待される。

[前田幸宏 2020年12月11日]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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