日本大百科全書(ニッポニカ) 「送りつけ商法」の意味・わかりやすい解説
送りつけ商法
おくりつけしょうほう
注文していない商品を勝手に送りつけ、強引に代金を支払わせる商法。高圧的に購入を迫るので「押しつけ販売」、購入拒否の選択肢しかないので「ネガティブ・オプション」ともよばれる。悪質商法の一つである。1990年代には、叙勲者向けに皇室写真集や、卒業者に同窓会名簿を送りつける手口が多かったが、2007年(平成19)以降、カニなどの魚介類や、健康食品、アダルトDVD、高額書籍などを悪用するケースが増えた。また、新型コロナウイルス感染症(COVID(コビッド)-19)流行時には、マスクの送りつけ商法が増えた。国民生活センターによると、2020年度の相談件数は6000件超。返品・購入拒否を通知しないと購入の意思があると決めつける、電話で強硬に売買契約成立を主張する、試供品を送るといって代金を請求する、商品の開封・廃棄を理由に代金を要求する、産地困窮を理由に買ってくれと泣きつくなど、さまざまな手口がある。送りつけられた人の名前・住所などが記入済みの請求書や現金書留封筒が同封されていたケースがあるほか、代金引換の郵便や宅配便を使うこともある。契約が成立したと信じこませる、あるいは高圧的態度で支払わせるといった手口が多く、被害者は高齢者が中心である。
消費者は送りつけ商法に対し、返品や代金支払いの義務はなく、配達時に受け取りを拒否できる。かつては商品を受け取った場合、特定商取引法(昭和51年法律第57号)59条に基づき、受け取った日から14日間(業者に引き取り請求した場合は7日間)の保管義務があったが、2021年(令和3)の同法改正で保管義務が撤廃され、同年7月から即時処分が可能となった。消費者庁はただちに廃棄するよう勧めている。海外から一方的に送付された商品についても同様である。代金を支払ってしまった場合、8日以内であればクーリング・オフが可能である。送りつけ商法に対し、特定商取引法上の罰則はないが、「受け取ったら契約成立」などと虚偽の説明をして代金を支払わせた場合、別途、詐欺罪に該当する可能性がある。
[編集部 2021年12月14日]