日本大百科全書(ニッポニカ) 「クーリング・オフ」の意味・わかりやすい解説
クーリング・オフ
くーりんぐおふ
cooling-off
割賦販売や訪問販売(外交販売)などで購入契約をした消費者が、一定期間内なら無条件で契約を取り消すことができる制度。頭を冷やし考え直す期間を置くという意味で、消費者を救済する制度で、1960年代に入って、強引な勧誘による販売トラブルが急増したことへの対策として生まれた。日本では訪問販売法によって、1976年(昭和51)に制度化され、期間は4日間とされた。1988年同法が改正、期間が8日間に延長され、適用対象も商品だけでなく、サービスの提供や施設利用の権利の販売などに拡大された。割賦販売法(1961年制定)にもこの制度があり、期間は当初の4日間から7日間(1984年)、さらに8日間(1988年)に延長されている。1996年(平成8)の訪問販売法改正で、電話による勧誘販売にも適用されるようになり、さらに2000年の改正により、被害の実情にあわせて規制対象が拡大され、法の名称も特定商取引法(正式名称は「特定商取引に関する法律」)と改称された。
クーリング・オフを行うには書面を用い、期間内に発信すればよい。その際、発信記録などの証拠を残しておくことがたいせつである。
[森本三男]
保険契約のクーリング・オフ制度
一般原則によると、契約の申込みは、その申込みが相手方に到達し効力が生じた後は任意に撤回することはできないものであり、また、契約が成立した後は、これを一方的に解除することはできない。これに対して保険業法は特定商取引法にならってクーリング・オフについて定め、保険契約の申込みをした者または保険契約者は一定の期間または一定条件のもとで保険契約の申込みの撤回または契約の解除を行うことができるとしている(保険業法309条)。クーリング・オフ制度は、販売人の攻撃的な売込みにより心理的な圧迫を受けて冷静さを失って契約の申込みを行いまたは契約を締結した者を保護しようとするものである。もっとも、保険契約の申込みの撤回または保険契約の解除は一定の期間または一定条件のもとでのみ認められている(同法309条1項1号~6号)。
[坂口光男]