連合弁膜症

内科学 第10版

連合弁膜症(後天性弁膜症)

概念
　弁膜症が複数の弁にわたるもの．
分類
　僧帽弁疾患兼大動脈弁疾患，大動脈弁疾患兼僧帽弁疾患，僧帽弁疾患兼三尖弁疾患など．たとえば，僧帽弁狭窄症兼大動脈弁狭窄症や大動脈弁閉鎖不全症兼僧帽弁閉鎖不全症，僧帽弁狭窄症兼三尖弁閉鎖不全症などの組み合わせがある．
病因
　器質的弁変化に続発する他弁の機能的異常や，複数の弁に器質的弁変化が出現して生じる．
病理
　器質的弁変化としてリウマチ熱，感染性心内膜炎，粘液腫様変性，動脈硬化性変性が多い．
病態生理
　器質的弁変化による弁膜症に，他弁の機能的弁異常が続発的に併発したり，器質的弁変化が複数の弁に出現して生じる．
臨床症状
1）自覚症状：
異常を呈する弁の組み合わせにより左心不全症状，右心不全症状が合併する．組み合わせや各弁異常の重症度により前面に出てくる症状は異なる．
2）他覚症状：
左心不全症状としての肺うっ血，右心不全症状としての浮腫，肝腫大などが混在する．
検査成績
　心エコー図断層法，カラードプラ法，連続波ドプラ法などを用いて，弁の器質異常，機能異常を判別したり，それぞれの重症度を確認できる．
診断
　複数の弁障害により自覚症状，聴診所見はさまざまに認められる．単独の弁障害の症状が増強されることもあり，減弱することもある．
合併症
　心内血栓，不整脈などを合併し脳血栓塞栓の原因になりうる．
経過・予後
　病態によりさまざまな経過をたどるが，一般的には緩徐，進行性に悪化する．
治療
　病態，重症度によりさまざまで，内科的，保存的治療から，単弁置換，単弁形成術，二弁置換，弁置換＋弁輪形成術，弁形成術＋弁輪形成術などさまざまな外科手術の組み合わせが，症例ごとに検討される．［兵頭永一・吉川純一］

出典　内科学 第10版

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典

連合弁膜症
れんごうべんまくしょう
combined valvular disease

複数の心臓弁が機能障害に陥った状態。リウマチ性病変が複数の弁にあるもののほかに，1つの弁の異常による心臓の肥大や拡張に伴った2次的な他弁の機能障害も含まれる。比較的多いものに僧帽弁狭窄または僧帽弁閉鎖不全兼大動脈弁閉鎖不全，僧帽弁狭窄または僧帽弁閉鎖不全兼三尖弁閉鎖不全がある。治療は弁の状態に応じて，2弁置換術，1弁置換術と他弁の形成術，交連切開術などを行う。 (→心臓弁膜症 )

出典　ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典

世界大百科事典（旧版）内の連合弁膜症の言及

【心臓弁膜症】より

…そこで，心臓弁膜症は障害された弁とその弁の状態によって分類され，僧帽弁狭窄症，大動脈弁閉鎖不全症などの名で呼ばれている。また二つ以上の弁の障害が同時にあるいは引き継いで起こることもあり，そのような状態を連合弁膜症と呼ぶようになった。
［心臓弁膜症の症状］
　大動脈弁と僧帽弁のある左心系の障害では呼吸困難を主徴とする左心不全が，肺動脈弁，三尖弁のある右心系の障害によっては浮腫，静脈怒張，肝腫大を示す右心不全が生ずる。…

※「連合弁膜症」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典｜株式会社平凡社「世界大百科事典（旧版）」