逸する(読み)イッスル

デジタル大辞泉 「逸する」の意味・読み・例文・類語

いっ・する【逸する】

[動サ変][文]いっ・す[サ変]

㋐ある枠から外れる。それる。「常軌を―・した行為
㋑《「佚する」とも書く》なくなる。散逸する。「本文を―・した古文書
㋒心のままに過ごす。気ままに楽しむ。
「富商大賈は―・して食う者もあらんと雖ども」〈福沢文明論之概略

㋐取り逃がす。のがす。「勝機を―・する」
㋑もらす。落とす。「功労者として―・することのできない名前
[類語]逃がす逃す取り逃がす失う失する長蛇を逸する

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「逸する」の意味・読み・例文・類語

いっ‐・する【逸・佚】

  1. [ 1 ] 〘 自動詞 サ行変 〙
    [ 文語形 ]いっ・す 〘 自動詞 サ行変 〙
    1. 離れる。それる。わきへはずれて走る。
    2. なくなる。うせる。散逸する。
      1. [初出の実例]「遂に伝へて佚せざるを得しなり」(出典:文芸類纂(1878)〈榊原芳野編〉三)
    3. 逃げる。のがれる。
      1. [初出の実例]「驚き見る間に羽ばたき高く、琵琶は籠中を逸し去れり」(出典:琵琶伝(1896)〈泉鏡花〉二)
    4. 逸楽(いつらく)をする。楽しむ。気ままにする。安逸にする。
      1. [初出の実例]「稀に富商大賈は逸して食ふ者もあらんと雖ども」(出典:文明論之概略(1875)〈福沢諭吉〉五)
  2. [ 2 ] 〘 他動詞 サ行変 〙
    [ 文語形 ]いっ・す 〘 他動詞 サ行変 〙
    1. なくす。落とす。また、殺す。
      1. [初出の実例]「あれがやうにわがにくき者いっせんずらん」(出典:愚管抄(1220)三)
    2. 逃がす。見すごす。
      1. [初出の実例]「遺恨十年磨一剣 流星光底逸長蛇」(出典:山陽詩鈔(1833)一・題不識庵撃機山図詩)
      2. 「代議士夫人となるの機会を見す見す逸するを惜み」(出典:思出の記(1900‐01)〈徳富蘆花〉一〇)
    3. ある範囲をはずれる。
      1. [初出の実例]「憖(なまじ)っか自我を持揚げたり、常識を逸(イッ)したりなぞ為ると」(出典:青春(1905‐06)〈小栗風葉〉秋)

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