逸早し(読み)イチハヤシ

デジタル大辞泉 「逸早し」の意味・読み・例文・類語

いち‐はや・し【逸早し/逸速し】

[形ク]《「いち」は、勢いのはげしい意の接頭語、「はやし」は、激しい、鋭いなどの意》
霊威霊験が著しく恐ろしい。
熱田神あつたのかみ、―・くおはしまして…やがてたち所に、罰せさせおはしましければ」〈宇治拾遺・三〉
情け容赦ない。はげしい。
「―・き世のいと恐ろしう侍るなり」〈須磨
気性がはげしい。気が強い。
「后の御心―・くて」〈賢木
すばやい。
真言院の律師一人、―・く読む」〈宇津保・国譲下〉
気が早い。
「いまだ御五十日いかだにきこしめさぬに、―・き御もてなし、めずらかなり」〈増鏡おどろの下〉

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「逸早し」の意味・読み・例文・類語

いち‐はや・し【逸早・逸速】

  1. 〘 形容詞ク活用 〙 ( 「いち」は、勢いやその程度のはなはだしいことを示す接頭語。「逸」は当て字。「はやし」は激しい意 )
  2. [ 一 ] 程度がはなはだしく激しい。
    1. 霊威が激しく恐ろしい。荒々しくすさまじい。
      1. [初出の実例]「浦の神厳忌(イチハヤシ)。人敢(あへ)て近づかず」(出典:日本書紀(720)欽明五年一二月(寛文版訓))
      2. 「熱田神(あつたのかみ)いちはやくおはしまして〈略〉やがてたちどころに罰せさせおはしましければ」(出典:宇治拾遺物語(1221頃)三)
    2. きびしく容赦がない。てきびしい。激しい。
      1. [初出の実例]「昔人はかくいちはやきみやびをなんしける」(出典:伊勢物語(10C前)一)
    3. 気性が激しい。気が強い。
      1. [初出の実例]「后(きさき)の御心いちはやくて、かたがたおぼしつめたる事どものむくいせむとおぼすべかめり」(出典:源氏物語(1001‐14頃)賢木)
  3. [ 二 ]速度、時間が)きわめて速い。
    1. 迅速、機敏である。速度が速い。
      1. [初出の実例]「真言院の律師一人、いちはやく読む」(出典:宇津保物語(970‐999頃)国譲下)
      2. 「とまらぬ仇人(かたき)はいちはやく、〈略〉繁きが中に飛び入りぬ」(出典:読・椿説弓張月(1807‐11)拾遺)
    2. 気が早い。性急だ。すばやい。
      1. [初出の実例]「いちはやかりける暦は不定なりとは」(出典:蜻蛉日記(974頃)下)
      2. 「いまだ御五十日(いか)だにきこしめさぬに、いちはやき御もてなし、めづらかなり」(出典:増鏡(1368‐76頃)一)

逸早しの語誌

[ 一 ]の非常に激しいさまから、[ 二 ]の速度が甚だしいさまに意味が広がっていった。現代語では、連用形「いちはやく」が副詞化して[ 二 ]の意味で用いられる。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

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