過去と思索(読み)かことしさく(その他表記)Byloe i dumy

改訂新版 世界大百科事典 「過去と思索」の意味・わかりやすい解説

過去と思索 (かことしさく)
Byloe i dumy

ロシア思想ゲルツェンの自伝的回想記で,全8部からなる大作。1854年から60年代の末にかけて書かれた。著者の人物と思想を知るうえで不可欠の書であるばかりか,19世紀中葉のロシアと西欧文学史・思想史・革命運動史の研究にとっても第一級の史料である。また,ゲルツェンの的確で鋭い人間観察は,本書をして興味の尽きない肖像画廊にしている。《告白》《詩と真実》《戦争と平和》に比肩されるゆえんである。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

関連語 長縄

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「過去と思索」の意味・わかりやすい解説

過去と思索
かことしさく
Byloe i dumy

ロシアの作家 A.ゲルツェンの回想記。 1812~68年,つまり著者が生れた年から死ぬ2年前までの半世紀にわたる膨大な自伝的著作。 54年に執筆を始め 15年後に完成。「われわれは歴史それ自体である」という歴史感覚に支えられて,まず革命家としての自分の生活の歩みを少年時代から回想し,デカブリストの乱からニコライ1世治下の社会の暗い時代を,思想と感情プリズムを通して鮮かに記録。また,50年代から 70年代までの「ロマン的亡命者」としての波乱に富んだ外国生活,さまざまな歴史的事件,親交を結び,あるいはともに戦った多くの革命家たちとの思い出を,まざまざと浮彫りにしている。彼の著作は帝制ロシアでは発禁となっていたため,この作品も 1920年に初めて完全な形で出版された。

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