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職業病 しょくぎょうびょうoccupational disease

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

職業病
しょくぎょうびょう
occupational disease

職業に原因があって起る病気。高温,振動,騒音放射線などの物理的要因,有害化学物質などの化学的要因,生物学的要因,あるいは不適当な作業方法,作業条件などが原因となる。鉱山労働者塵肺などは古くから存在する職業病であるが,近年の職業病としては,合成化学物質による中毒,放射線障害振動障害頸肩腕障害職業癌などがある。職業病の予防には,原因となる要因に接する機会が少くなるように,設備,作業環境,作業方法,作業時間などの労働条件を整え,また適切な労働衛生保護具を使用することが大切である。さらに定期的に健康診断を行い,早期発見に努めることも必要である。職業病や労働災害を防止し,労働者の安全と健康を確保する目的で,1972年に労働安全衛生法労働基準法から分れて制定された。

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デジタル大辞泉の解説

しょくぎょう‐びょう〔シヨクゲフビヤウ〕【職業病】

職業の労働条件・環境などによって起こる障害。騒音による難聴、手を使うことによる頸肩腕(けいけんわん)障害、化学物質を扱うことによる中毒など。
俗に、ふだんから出てしまう職業上のくせや習慣。

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百科事典マイペディアの解説

職業病【しょくぎょうびょう】

職業労働に起因して発生する健康障害の総称。狭義には特定の職業にのみ発生するもの。広義には一般に発生する疾病が職業性の因子によって発生したもの,すでに存在した障害が職業因子の影響により悪化したものも含む。
→関連項目産業医学ベンゼン中毒労働衛生労働災害

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世界大百科事典 第2版の解説

しょくぎょうびょう【職業病 occupational disease】

職業病は,職業労働に伴う職業因子の影響によって発生した健康障害の総称で,職業に起因した疾病ともいえる。職業性の健康障害は,特定の職業にのみ発生するもの(狭義の職業病),一般にも発生する疾病が職業性の因子によって発生したもの,すでに存在した健康障害が職業因子の影響によって悪化したもの(例,高血圧者に過重な負荷が加わって発生した脳出血)などが含まれる。日本の労働基準法75条の定めでは,職業性の健康障害のうち,業務との因果関係が認められ,治療を必要とするものを業務上疾病と定め,それを労働基準法施行規則35条の別表第1の2に列記している。

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大辞林 第三版の解説

しょくぎょうびょう【職業病】

従事している職業の特性や職場環境により起こる疾病の総称。鉱山労働者の珪肺けいはいや炭肺、水銀やカドミウムを使う工業に従事する人の中毒、タイピストの腱鞘炎など。
転じてある職業に就いている人が、つい日常生活に持ち込んでしまう職業上の習慣。接客業の人が客として店に訪れた際に、店員につられてつい「いらっしゃいませ」と言ってしまう場合など。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

職業病
しょくぎょうびょう

ある病気が、職業に原因があっておこった場合に、その病気を職業病という。したがって、ある病気が職業病と決められるためには、その病気と、その人が従事している、あるいは従事していた職業との間に因果関係のあることが証明されなければならない。証明するためには、職業の内容、勤続年数、作業条件や作業方法、作業現場の環境、患者の症状を詳しく調べる必要がある。なお、職業病とよく混同するものに業務上疾患がある。これは、労働者が業務上で負傷したり病気になった場合に、「労働基準法」第75条・76条・77条などによって、必要な療養に要する費用や、休業し療養中の労働者に対する賃金の支払いを使用者が行うものである。すなわち、業務上疾患とは補償を必要とする疾病や負傷をいう法律用語であり、職業病と同一ではない。
 また、有害な労働環境および労働条件の改善や、産業技術の進歩に伴う作業の自動化が普及したことなどにより、かつてのような単一の労働要因に起因して発症する職業病は減少した。かわって、長時間労働や、長時間一定姿勢を保持しなければならない作業などの労働要因に、作業者個人の遺伝素因や食習慣、生活習慣などの非労働要因が加わって発症する、多要因性の慢性疾患が増加してきた。これを作業関連疾患とよんでいる。[重田定義]

歴史

ある種の職業病は、すでに紀元前4世紀ごろより知られており、ヒポクラテスHippocratesは鉛中毒に関して、アリストテレスAristotelsは一酸化炭素中毒についてそれぞれ記述している。16世紀に入ると、ドイツの鉱山医師アグリコラG. Agricolaは、『デ・レ・メタリカ』De Re Metallicaのなかで鉱山労働者の珪肺(けいはい)について記載しているが、職業病の著書としてもっとも有名なのは、ラマッツィーニB. Ramazzini(1633―1714)の『労働者の病気』Morbis Artificum Diatribaである。本書には53にも上る当時の職業病について、その原因、治療法、予防法などが詳しく記載されている。18世紀なかばに始まった産業革命は、またたくまに全ヨーロッパに広まり、生産を著しく上昇させたが、その裏では劣悪な労働環境や労働条件の下で、労働者の疾病が多発し、1802年になると、イギリスで最初の労働衛生に関する法規が制定された。
 20世紀に入ると、第一次世界大戦を機として化学工業、重工業が発達し、そのために粉塵(ふんじん)その他の有害化学物質、高温環境や重量物取扱いなどによる職業病が増加し、社会的にも関心が高まり、各国では予防のための法規の制定や職業病の研究機関の設立が進められた。第二次世界大戦以降には、技術革新と工業化の急速な進展、とくに石油化学工業の勃興(ぼっこう)や量産方式の普及などを背景として新しい職業病がおこり、国際的な規模での問題解決の道が探られている。
 明治以前の日本では珪肺や鉛中毒について知られている程度であったが、明治以降の近代産業の発達は労働者に多くの悲惨な犠牲を強いることとなった。とくに重要なのは工場労働者の肺結核の蔓延(まんえん)であり、石原修(おさむ)は1913年(大正2)この問題を『衛生学上ヨリ見タル女工之現況』で指摘している。一方、黄リンマッチ工業による顎骨壊疽(がくこつえそ)や、昭和初期に急速に発達した人絹(じんけん)(人工絹糸、レーヨン)・スフ(ステープルファイバー)工業でみられた二硫化炭素中毒などの特殊な職業病も増加した。こうした事情を背景に、1921年になると私立の倉敷労働科学研究所が設立され、初めて本格的に職業病の調査と研究が進められるようになった。しかしながら、その後、日中戦争から第二次世界大戦へと戦争が拡大したことによって、職業病など労働者の保健に関する問題はまったく影を潜めてしまった。労働者の保健等の問題が新たに注目されるようになったのは、第二次世界大戦後である。1947年(昭和22)に労働省(現厚生労働省)が設置され、「労働基準法」と「労働者災害補償保険法」が公布、施行されてから、ようやくにして職業病に対する社会的認識が深まってきた。[重田定義]

発生要因

職業病をおこすおもな原因には次の三つがあげられる。
(1)作業強度、作業密度、作業姿勢、作業速度、作業時間など、作業量が大きすぎるか、作業条件が適当でないためにおこる場合
(2)温度、湿度、気流、光線、騒音、気圧、振動など物理的作業環境条件が異常なためにおこる場合
(3)ガスや粉塵および各種有害化学物質などの有害物の取扱いや病原体感染によっておこる場合[重田定義]

種類と予防

産業の発達、生産技術の変革により職業病の発生形態も変わるが、職業病を予防するには、以下の対策を総合的に推進しなければならない。
(1)作業環境管理 適当な換気、採光、照明、温熱条件が得られるよう、また騒音、振動、有害輻射(ふくしゃ)線、電離放射線などの有害物理条件の影響を防ぐための設備の改善、作業方法の変更。有害物質の発散するおそれのあるところでは、生産工程や作業方法の変更、原材料の代替使用、発散の抑制、設備の密閉または隔離、局所排気装置の設置。また、環境中の有害物の濃度を測定して、健康に障害を及ぼす濃度か否かを監視するなど。
(2)作業方法管理 作業の肉体的・精神的負担をできるだけ軽減するよう人間工学的配慮の下に、作業の機械化、装置のレイアウトや作業工程の変更、機械、作業台、椅子(いす)の改善など。
(3)勤務制管理 作業環境や作業強度に応じた作業時間、休憩時間の設定、残業の制限・廃止、交替勤務の合理化など。
(4)適正配置 労働者の身体能力、知識、技術、性格などを考慮して、適性のある職場へ配置する。とくに女子、年少者、高年者、身体障害者、虚弱者などに対する配慮など。
(5)安全衛生教育 雇い入れ時、作業内容の変更時には、有害業務に従事する労働者に対してかならず行う。
(6)健康診断と事後措置 法規によって定められたもののほか、医師が必要と認めた健康診断を実施し、その結果に基づいて保健指導、職場配置や勤務時間の変更を指示する。
(7)労働衛生保護具 有害環境から労働者を守るために、保護具を必要とする作業場ではかならず着用させる。[重田定義]

職業病に関する法規

「労働基準法」は、労働時間、休日など勤労条件の最低基準を定めたものである。「労働安全衛生法」は、職場における労働者の安全と健康を確保するとともに、快適な作業環境の形成を促進する目的で制定され、安全衛生管理に対する事業主の責任を明確にし、また事業場の安全衛生管理の組織と活動の基準を定めている。「じん肺法」は、粉塵作業に従事する労働者の塵肺に関する健康診断とその結果に基づく事後措置、とくに重症者の配置転換、療養、補償などを規定している。「作業環境測定法」は、「労働安全衛生法」第65条の規定(作業環境の測定)を受けて、適正な作業環境確保のために、作業環境測定士、作業環境測定機関の制度を設け、一定の有害作業場における環境測定は有資格者に行わせるべきことなどを定めている。[重田定義]
『財団法人厚生統計協会編・刊『国民衛生の動向』各年版』

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