翻訳|telemetering
テレメータリングともいう。測定量を検出して,離れている受信機に伝送して行う測定。遠隔測定がふつうの測定と区別される点は,測定量が直接検出される場所と,その指示,記録などを行う場所との間に距離が存在すること,そして距離の存在に伴う問題,例えば伝送される信号の大幅な減衰,信号へのノイズの混入,伝送路の費用などを克服するための対策がとられることである。距離の長短によって遠隔測定と呼んだり呼ばなかったりすることはない。例えば,電圧,電流,電力などを計器用変成器を介して測定する場合,その二次側導線を延長することにより,また工場で電気的な制御を行うため温度,流量,圧力,成分などを電気信号に変換する場合,その変換器の出力導線を延長することにより,かなりの距離をおいた場所での測定が可能であるが,それだけでは一般に遠隔測定とは呼んでいない。信号の減衰やノイズの混入による影響をほとんど受けないような信号形態を用いている場合,有線伝送が不可能,または不経済なために無線伝送を行っている場合,有線伝送であっても伝送路の費用を節減するため多重伝送を可能にしている場合にとくに遠隔測定と呼ぶのがふつうである。地上でこのような遠隔測定を必須とする分野は,広域にわたって測定量検出場所が散在している電力事業,水道事業,ガス事業,輸送事業(パイプライン輸送を含む)などである。距離が非常に短く,例えば数cmにすぎない場合でも,生体内部の現象を無線を介して生体外部で測定したり,回転体の温度などを無線を介して静止場所で測定したりするのは一般に遠隔測定と呼ばれている。
遠隔測定のための装置(テレメーターtelemeter)は,(1)測定量を検出して伝送に適した信号に変換する装置,(2)その信号を遠隔場所へ伝送する伝送路,(3)伝送された信号を指示,記録などに適した信号に変換して,指示,記録などを行う装置から構成される。(1)および(3)は測定の課題,(2)は通信の課題であり,遠隔測定には測定技術と通信技術との互いに協調した組合せを必要とする。測定量は多種多様であるが,(1)の装置で応用分野ごとに統一された信号に変換されるのが通常であり,この統一信号としては0~5Vの直流電圧が多く採用されている。(2)の伝送路は遠隔測定(およびそれに対して逆方向の遠隔制御)を主目的として設けられることもあるし,種々の目的をもついわば業務用の通信回線の一部分が遠隔測定用に割り当てられることもある。宇宙用や医用の遠隔測定では前者であり,産業用の遠隔測定では多くの場合後者である。産業用のうち,電力事業ではみずからの電力用通信回線を保有しているのでその一部分を遠隔測定に利用しており,水道事業などでは電電公社の電話回線を遠隔測定用に専用線として借用していることが多い。(3)の装置でも,統一された信号,例えば0~5Vの直流電圧への変換が行われるのが通常であり,その信号を与えられる指示,記録装置などとしては遠隔測定用に限らず汎用(はんよう)のものを使用することができる。
遠隔測定の方式は伝送信号の形態(変調の方式)により分類されることが多い。測定量により副搬送波にいずれかの変調を行い,さらに被変調副搬送波により主搬送波にいずれかの変調を行う。副搬送波の変調がパルス符号変調(PCM),主搬送波の変調が周波数変調(FM)であれば,PCM-FM方式と呼ばれる。さらに,3段階以上の変調が行われる場合もある。PCMを利用するディジタル方式とアナログ方式に大別される。アナログ方式のうち,振幅変調(AM)およびパルス振幅変調(PAM)は単独では本格的な遠隔測定には適さない。なぜならば,伝送途中の信号の減衰により直接的に誤差を生ずるからである。周波数,パルス継続時間,またはパルス位置が測定量の振幅に対応する方式では,そのようなことはない。最良の精度を得られるのはPCMである。この場合には,伝送途中のノイズ侵入などによる誤りの自動検出,さらには自動訂正を高い確率で行うことができる。
PAM,パルス幅変調(PDM,またはPWM),パルス位置変調(PPM)およびPCMでは,連続的な測定量がサンプリングにより不連続的な信号に変換されている。これらのサンプリング方式の理論的基礎はC.E.シャノンのサンプリング定理であり,それに基づいて,測定量に含まれる最高周波数成分の周波数に応じたサンプリング周期が選定されなければならない。遠隔測定では伝送路の多重利用を行うのが通常であるが,サンプリング方式では,サンプリング周期を複数の時間間隔に分割して,複数の信号を順次に伝送する時分割多重方式が採用されている。この方式にもっとも向いているのは,ディジタル信号の特質として記憶が容易なPCMである。もう一つの多重方式は,周波数帯域を複数の部分的な周波数帯域に分割して,そのおのおのにより複数の信号を同時に伝送する周波数分割多重方式であり,パルス周波数変調(PFM)およびFMに対して採用されている。FM-FM無線テレメーターの標準方式では,370~430Hzから64.750~75.250kHzまで等比級数的に不等間隔の18分割が行われており,最高周波数成分の周波数が高い測定量に対しては帯域幅の広い副搬送波が用いられる。産業用テレメーターでは音声周波数帯域の等間隔の18,または24分割が行われている。
→変調
執筆者:石橋 誠一
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