一般には人が遠く離れている対象を望みのままに操ることをさす。リモートコントロールといい、また、リモコンと略称されることが多い。工学上の概念としては、制御装置が制御対象と同一場所になく、前者から後者に対して制御信号が伝えられるだけで、動作エネルギーは送られていない制御形態の総称である。
多くの場合、制御装置は、操作者の近くにある制御装置と、制御対象の近くあるいは内部に設置される第二の制御装置とから構成される。前者はリモートコントローラーであり、後者はローカルコントローラーである。制御情報は前者から後者に送達され後者が対象を操作する。ここで、遠隔の目安となる距離条件の定義はなく、室内距離程度から宇宙空間に至るまで範囲はきわめて広い。具体的に数値で表示される境界値が存在するわけではない。むしろ、距離の遠近にかかわらず制御の質が影響を受けず、必要に応じて距離の延長ができることが要件となる。たいせつなことは、距離にかかわらず遠隔制御が時間遅れなく実現できること、すなわち、制御の即時性が必要条件である。さらに制御対象を操作するエネルギーに特徴がある。リモートコントローラーから制御信号が送られるが、制御操作に必要なエネルギーは送られない。対象自身のもつエネルギーか、あるいはローカルコントローラーから供給されるエネルギーであることが特徴である。たとえば、放射性廃棄物処理などを隣室から行うマニピュレーターや、飛行機、船の操舵(そうだ)などは、操縦する人間と対象である舵(かじ)との距離があって、遠隔制御のようであるが、制御信号とともに動作エネルギーも人間から伝えられている場合は遠隔制御とはよばない。遠隔操作、あるいはリモートオペレーションremote operationとよんで両者を区別する。一方、同じ理由で、手持ちのリモートコントローラーによるテレビのチャンネルの切替えは、たとえ受像機のすぐそばで行っても遠隔制御である。遠隔ということばにこだわりすぎると誤解を招くことがある。
遠隔制御を行うためには、事前に対象の状態、挙動を知らなければならないことはもちろん、制御の結果をも制御信号を送るたびに確かめなければならない。そのため遠隔制御システムには遠隔計測機能が欠かせないので、発信した遠隔計測の情報が制御信号を発信した人間にフィードバックされる閉ループ制御となる。したがって、もしノイズなどで対象の状態が変化した場合、遠隔計測により状況を把握して訂正動作で変化を修正できる。
遠隔制御が必要となるのは、次のような場合である。
(1)制御対象の所在に人間が危険で近寄れない場合 有毒ガスの存在や深海底、強い放射能が存在する場所など。
(2)制御対象が遠くに位置し、常時操作が必要であるが、人を制御対象に常時滞在させることが困難な場合 山奥のダムの水位制御や無人変電所の制御など。
(3)移動体や可動体の無人操縦や無人操作を行うため、遠方から操作器を制御する場合 ロボットや人工衛星の制御やミサイルの誘導など。
制御信号を伝える方式は、遠隔計測と同じように、実用性の優れている電子通信方式が主体であるが、家電機器のリモコンは赤外線である。遠隔制御の形式は多様である。リモートコントローラーの制御信号により直接対象が制御される場合と、リモートコントローラーの制御信号によりローカルコントローラーの目標値が操作される場合とがある。この場合、ローカルコントローラーには自律的な制御機能があり、制御対象に加えられた外乱に対しては、その制御機能が対応して外乱の影響を抑圧する。二足歩行ロボットの遠隔制御はまさにこのような方式であり、歩行の段階におけるロボットの姿勢やバランスは、自律的な制御により保持されている。リモートコントローラーはロボットの歩行の方向や速度など高次の動作を指令する方式である。
[山﨑弘郎]
制御信号を、伝送方式としては電子式による送受信装置と伝送路を用いる遠隔制御システムをテレコントロール・システムtelecontrol systemという。通常制御対象の情報を伝送するテレメーターシステムと一体になり広域監視制御システムを構成する。電力、ガス、水道など設備が広域に分散する産業で使用されている。
[山﨑弘郎]
テレビをはじめビデオ、オーディオ用電子機器では、リモコンが付属していることがあたりまえになって、直接手が届くような距離においてもリモコンが使われている。これらのリモコンでは制御信号の伝達に当初超音波が使用された。しかし、ドアの開閉や器物の落下など、広い周波数帯域をもつ超音波ノイズが多く、それによりリモコンの受信側が誤動作する例が続出した。そのため、現在のリモコンはほとんど赤外線パルスによる伝達方式になった。赤外線伝送は到達距離が小さいが、低コストのために採用された。家庭では同じようなリモコンが複数あって正しくリモコンを識別して使用しなければならないので、かえって不便である。そのため、1台のリモコンの操作ボタンに、学習により複数の機器の操作を割り付けた万能リモコンが出現した。
模型飛行機や模型自動車などの無線操縦は、遠隔制御の例であるが、信号媒体が電波であることから「ラジコン」(ラジオコントロール)の呼称が「テレコン」あるいは「リモコン」よりも通りがよい。船舶、航空機の無線による無人操縦は、20世紀初めころから欧米で実験が始まり、当時一般にリモートコントロールといわれた。日本では第二次世界大戦中に試みられたが、ほとんど軍事目的であった。現在ではミサイルの制御で確立された技術になったが、さらに高度化して遠隔制御された無人航空機に有人と同様に高度な偵察や攻撃などを実行させるまでに進歩した。兵器の自動化、戦争の無人化へと進んでいるといえよう。
[山﨑弘郎]
『計測自動制御学会編『自動制御ハンドブック 機器・応用編』(1983・オーム社)』
遠隔操作とも呼び,リモートコントロールを短縮してリモコンと俗称する。離れた所から手動または自動で信号を送って操作部を動作させる制御のことで,信号を伝送するのに,距離が比較的短い場合には電線を,ある程度以上の距離になると電話線や無線通信を用いるのが一般的である。なお測定量の遠隔伝送を遠隔測定(テレメータリングtelemetering)という。遠隔制御の例としては,模型のリモコン,ミサイルなどの射撃指揮装置,原子力関係のマニピュレーターや作業機械の制御,水中航走体や水中作業機械の制御,宇宙関係の人工衛星や宇宙探査機の制御などがある。
執筆者:大島 康次郎
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