遺伝的浮動(読み)いでんてきふどう(英語表記)genetic drift

  • いでんてきふどう〔ヰデンテキ〕

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

同じ生物集団内で特定遺伝子の占める割合が,偶然に変動する現象。たとえばヒト血液型の違いはそれぞれ生存にとって有利不利がないので,現在人種間,国家間で4種の血液型 (A,B,O,AB) の割合に違いがあるのは,偶然の変動,つまり遺伝的浮動の結果と考えられる。これは有利な変異を持つものが生き残って,その遺伝子が集団内に広がる,という自然選択説の考えとを成すものである。

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知恵蔵の解説

集団の遺伝子頻度が自然淘汰とは無関係に変化すること。繁殖過程で多数の遺伝的組み合わせのうちの1組が機械的に選ばれるため、特定の遺伝子が偶然に何回も選ばれることが起こり、遺伝子頻度に変化をもたらす。小さな個体数の集団では対立遺伝子一方が消失し、他方の遺伝子が固定されることもあり、この現象が進化に果たす役割をS.ライトが理論的に明らかにしたことから、ライト効果とも呼ばれる。進化の中立説もこれによって説明される。

(垂水雄二 科学ジャーナリスト / 2007年)

出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

生物の個体群にみられる現象で、毎代の繁殖の際に次の代に伝えられる遺伝子が無作為的に取り出される過程で、遺伝子頻度が変動することをいう。世代を多く重ねている間に、この効果が累積してしだいに元の遺伝子頻度から偏り、著しい場合には対立遺伝子の一方が失われたり、または集団中に固定したりする。この効果は選択や突然変異とともに、集団の遺伝子頻度を変化させる要因の一つとなっているが、自然選択や人為選抜と異なり、変化に方向性がない。遺伝的浮動の大きさは、集団が小さいほどその変動が大きい。アメリカの集団遺伝学者ライトSewall Wright(1889―1988)が初めて指摘したので、ライト効果ともいわれる。

[井山審也]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

世界大百科事典内の遺伝的浮動の言及

【機会的浮動】より

…遺伝的浮動ともいわれる。個体数がNの集団は前の世代の個体が作った多数の配偶子から機会的に選ばれた2N個の配偶子から成り立っている。…

※「遺伝的浮動」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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