都市公害(読み)としこうがい

百科事典マイペディア 「都市公害」の意味・わかりやすい解説

都市公害【としこうがい】

人が都市に集中し生活するなかで発生し,被害を受ける公害。典型的なものは大気汚染騒音振動水質汚濁土壌汚染悪臭地盤沈下などがあげられる。日本では,高度経済成長期の1950年代から1970年代にかけて,都市の工業地帯のばい煙・産業廃棄物,自動車の排気ガス等の影響によって甚大な被害がもたらされた。環境省や公害等調整委員会などの国の行政機関や地方自治体の取り組みをはじめ,さまざまな公害規制のための立法措置が講じられ,また公害に対する国民の意識の高まりもあって,1970年代以降減少に向かい,この過程で日本は世界有数の環境技術を持つに至った。近年深刻な都市公害が問題となっているのは中国で,北京市をはじめとする都市のPM2.5やより小さな微粒子であるPM0.5などの大気汚染は,急速な工業化,大都市での車の急増冬季暖房が主たる原因。典型的な都市公害を生み出している。加えて工場などの公害環境設備の劣悪,規制当局と国民の環境意識の低さが大きな要因となっている。すでに数年前から,中国の環境保護部や大学機関では,より大きな微小粒子であるPM10による大気汚染で,中国全土で年間約30万人の死者が出ると推定している。2013年,2014年と連続して北京をはじめ都市の冬の汚染はきわめて深刻で,韓国,日本への越境汚染も急増しており,日本は環境省をはじめ各自治体で監視体制を強化,大気汚染注意報,PM2.5注意報を出している。ただし越境汚染だけが注目されがちだが,日本各地での観測分析結果でPM2.5の成分が中国で発生するものとは異なるものが含まれている例も指摘されており,日本の監視分析体制のさらなる整備が急がれている。

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