PM2.5(読み)ぴーえむにーてんご

日本大百科全書(ニッポニカ) 「PM2.5」の意味・わかりやすい解説

PM2.5
ぴーえむにーてんご

粒径2.5マイクロメートル以下の非常に微細な物質。PMはparticulate matterの略で、微粒子と訳される。スーパーPM、微小粒子状物質ともいう。火山灰や森林火災時に発生する自然由来のものに加え、石炭火力、あるいは自動車排気ガスなどに含まれ、大気汚染の原因物質となる。その主体は硫酸塩であり、石炭やガソリンを燃やすと発生する二酸化硫黄(いおう)が空気中で酸化することで生成される。ほかに亜鉛、銅、スズなどの重金属も含まれている。こうした物質を一定量以上吸引すると、気管支を通過し肺の奥まで入って付着し外部に排出できないため、喘息(ぜんそく)、気管支炎肺癌(はいがん)をはじめとする呼吸系・循環器系の疾患をもたらすことがわかっている。日本では、1973年(昭和48)に環境基準を定め、大気中に浮遊する粒径10マイクロメートル以下のPM10については排出を規制してきたが、2009年(平成21)にはPM2.5に対して、より厳しい環境基準(1日平均、1立方メートル当り35マイクログラムまで)を設定した。中国ではその基準がゆるく、石炭火力や自動車の排気ガスから大量のPM2.5が発生することが知られている。2013年、中国で発生したPM2.5が、偏西風影響が強くなる1月3月にかけて日本に飛来各地で日本の環境基準を超える値を観測した。とくに九州地方でその影響が大きい。

[編集部]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「PM2.5」の意味・わかりやすい解説

PM2.5
ピーエムにてんご

大気中に浮遊している,直径が 2.5μm以下の微粒子(1μm=0.001mm)。微小粒子状物質と呼ばれることもある,大気汚染物質の一つ。一般に大気汚染の原因となる微粒子を粒子状物質 particulate matterという。日本では従来から,直径が 10μm以下の浮遊粒子状物質 SPMについては環境基準を定め対策が進められてきた。しかし 21世紀になって,より微細な浮遊粒子状物質である PM2.5が,呼吸器系や循環器系への影響,発癌性(→),喘息(→気管支喘息)の原因となりうることなどが指摘されるようになり,2009年には環境基準が定められた。さらに 2013年春以降,中国大陸における甚大な大気汚染の発生に伴う社会的関心をうけて対策がとられ,大気汚染防止法に基づき環境省や地方自治体が全国の 700ヵ所以上で PM2.5の常時監視を行なっている。発生メカニズムには,物の燃焼などで直接排出される場合と,硫黄酸化物 SOxや窒素酸化物 NOx,揮発性有機化合物 VOCなどガス状の大気汚染物質が大気中で化学反応して粒子化する場合の 2通りある。おもな発生源には,ディーゼルエンジン車(→ディーゼル機関)や工場,石炭発電所などからの排ガス,煤煙粉塵などの人為起源と,土壌や火山などから発生する自然起源のものがある。

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