改訂新版 世界大百科事典 「都市自治体法」の意味・わかりやすい解説
都市自治体法 (としじちたいほう)
Municipal Corporation Acts
19世紀のイギリスにおける都市行政の改革立法をいう。とくに中世来の都市行政を大きく改革した1835年の法律が有名である。19世紀にいたるまでのイギリスの都市自治体は,少数の自由民freemenだけに自治体構成員の特権を限定し,市長,特別参事会員aldermen,一般参事会員common councilmen,治安判事等の役職を,その自由民中の有力者で独占するという,閉鎖的な寡頭支配体制であった。しかし,1835年の都市自治体法は,178の旧都市自治体を廃止して,そのすべてに市参事会town councilを創設し,これを市政の中心機関とした。市参事会員の任期は3年で,毎年その3分の1ずつが改選され,選挙人の資格は,当該都市域に3年以上居住する地方税納入者と定められた。市長と特別参事会員は市参事会員によって選挙され,治安判事は国王の任命するところとなった。この改革立法の結果,地主・大商人・国教会聖職者等の保守勢力に代わって,商店主・事業主・パブ経営者・非国教徒等のブルジョア階級が都市政治の主たる担い手となった。また,82年の都市自治体法は,この1835年法と,その後公衆衛生,住宅といった都市問題とのかかわりでつくられた法律の諸規定を統合したものである。
執筆者:村岡 健次
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報