日本大百科全書(ニッポニカ) 「配当政策」の意味・わかりやすい解説
配当政策
はいとうせいさく
dividend policy
利益のうちどれだけを、いかなる時期に、どのような形で配当するかについて、企業がとる方針。伝統的には、株主が株主総会において自ら配当に関する決定をしていたが、現代の株式会社では、配当に関する実質的決定は、経営者が企業維持という長期的視点から行う。そのために政策が必要とされるようになった。「どれだけ」は当期処分可能利益金を配当金と内部留保に分割することであり、換言すれば配当性向payout ratioもしくは内部留保率を決定することである。株主の投資家化が進んでいる所有と経営の分離した現代株式会社では、長期安定的配当が採用される。このためには、各期の配当金総額を安定させる必要があるが、利益額のほうは変動するから、「いかなる時期」についての配慮が必要になり、具体的には配当平均積立金の利用が問題になる。それは、利益の多い年度に積み立て、利益の少ない年度に取り崩して配当を平均的に安定させるものである。安定配当政策と対照されるのは、株主の発言力の強い会社で採用される利益型配当政策であり、各期の利益に連動させて配当を変化させるものである。この場合には、配当性向の安定が重視されることになる。「どのような形」とは、配当支払いの形態をいう。配当は現金で行うのが普通であるが、現物配当や株式配当のような非現金配当もある。株式配当は自社の未発行株式の交付をもって配当金にかえる方法であり、法律上は株式分割となる。
[森本三男]
『石川博行著『配当政策の実証分析』(2007・中央経済社)』