利益処分に関する株主総会の普通決議により,配当可能利益の全部または一部を資本に組み入れることができるが(商法293条ノ2),その際,資本組入額を引当てにして新株を発行し,株主に分配することもできる。この株式発行は株式分割にほかならないが,これを株式配当と呼ぶこともある。株式配当は1950年にアメリカ法にならって導入されたが,1990年の商法改正で,配当可能利益の資本組入れと株券の提出を要しない株式の分割と分離された。株式配当をするときはこの両方の手続が必要である。経済的にみれば,株式配当によって,会社は現金の社外流出を避けることができるし,株式配当を受けた株主は現金が欲しいときはその株式を売却すればよい。株式配当により株式数が増えるから,株価が高すぎるとき株式配当によってそれを下げることもできる。
→株式分割 →配当
執筆者:田村 諄之輔
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…この場合,資本金は増加するけれども,その分だけ法定準備金が減少するので,企業の資金調達の観点からいえば,実質的な変化は生じていない,つまり新たな資金が調達されたわけではない,ということに注意しなければならない。資本金が増加する場合としては,いま一つ,株式配当の場合がある(商法293条ノ2)。それは利益配当の一形態であって,株式資本金は増加するけれども,その分だけ処分可能利益が減少するので,この場合も,組入資本金の増加の場合と同様に,資金の流れはまったく生じない。…
…高すぎる株式市価を下げて市場性を高め,配当率を維持しながら増配の実をあげるなどのために行われる。かつての商法は,法定準備金ないし発行価額中額面超過額または配当可能利益を資金に組み入れた会社が,これを引当てにして株主に無償で新株を発行する場合に,前者を無償交付,後者を株式配当と呼んでいたが,これらは資本組入れを伴う点で単純な株式分割と異なるだけで,新株発行の面では株式分割にほかならない。そこで,1990年の商法改正により,現在では,従来の無償交付と株式配当は株式分割に含められ(218条),資本組入れは別個の制度となっている(293条ノ2,293条ノ3)。…
…1981年の商法改正により時価発行増資の場合,株式の発行価額の少なくとも2分の1は資本に組み入れなければならなくなり,そのうちの券面額超過分について株主に対して株式を発行できることになった。無償増資とは手続方法は異なるが,株主総会の決議により配当すべき利益金を資本に組み入れて新株を発行する株式配当がある。【大須賀 昇】。…
…配当金は,会社の事務処理上,5年とか3年の経過で会社が支払義務を免れる旨定款で定めているのが普通であるが,このような定めは不当に短いものでなければ有効と一般に解されている。【田村 諄之輔】
[株式配当,中間配当]
利益配当は金銭によるのが建前であるが,株式をもってする配当も認められている。これを株式配当(株配)といい,配当の全部または一部を資本に組み入れて新株を発行して株主に分け与えるものである。…
※「株式配当」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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