日本民謡分類上、仕事唄のなかの一種目で、日本酒の醸造工程で歌われる唄の総称。工程順に唄が異なる。まず、仕込み桶(おけ)などを熱湯消毒しながら洗うおりに歌う「桶洗い唄」(「流し唄」ともいう)。米を精白するおりに歌う「米つき唄」。米を水洗いするおりに歌う「米とぎ唄」。釣瓶(つるべ)で井戸から水を汲(く)み出すおりに歌う「水釣り唄」。蒸した米を発酵させるための微生物酒母(しゅぼ)を繁殖させる酛(もと)を仕込むおりに歌う「酛摺(もとす)り唄」がある。それが終わると、いよいよ酛に蒸し米と水を加えて糖化発酵させることで醪(もろみ)造りの仕込みが始まり、これは初添(はつぞえ)、仲添(なかぞえ)、留添(とめぞえ)の3段階で順次分量を増やしていくが、このときの「仕込み唄」は、土地により、酒蔵によって種々の名称があり、「風呂(ふろ)上り唄」「三本櫂(かい)唄」「添え突き唄」「仕舞いの唄」などという。そして一般に「酒屋唄」とよぶときは「酛摺り唄」をさす場合が多い。これら酒造り唄は、酒蔵へ出入りする杜氏(とうじ)の故郷の農作業唄か、酒蔵周辺の農作業唄が転用されたものが大部分を占めている。なお杜氏を大別すると、「南部杜氏」「越後(えちご)杜氏」「丹波(たんば)杜氏」の三つの系統があり、唄のほうもその3系統のなかではそれぞれほぼ共通である。
[竹内 勉]
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