家庭医学館 「酸中毒」の解説
さんちゅうどく【酸中毒 Acid Poisoning】
酸には、塩酸、酢酸(さくさん)、シュウ酸、フッ化水素酸、硫酸(りゅうさん)、ギ酸、硝酸(しょうさん)などがあります。
中毒事故は、これらを扱う職場でおこることが多いのですが、家庭用のトイレ洗浄剤のなかには、かなりの濃度の酸を含むものがあって、取り扱いを誤ると、中毒事故につながります。
●目に入ったとき
角膜(かくまく)が損傷を受けることがあります。
治療 1秒でも早く、大量の水で最低でも15分間は目の中を洗い流し続けます。
無理なく外せるならば、コンタクトレンズを外します。
この手当をしても痛みや腫(は)れが治まらないときは、眼科を受診します。
●ガスを吸入したとき
まもなく肺水腫(はいすいしゅ)が発生します。硝酸の場合は、1~2日後におこります。
治療 ただちに空気の新鮮な場所に移します。
呼吸困難があれば酸素吸入が必要になります。気管切開(きかんせっかい)や陽圧人工呼吸が必要になることもあります。
気管支けいれん、ぜんそくのような喘鳴(ぜんめい)があれば、気管支拡張薬を使用します。
●飲んだとき
胃が腐食し、穿孔(せんこう)がおこることがあります。穿孔がおこらないと、早ければ3週間目ごろ、ときには数か月~数年後に狭窄(きょうさく)がおこることが少なくありません。
治療 ぜったいに吐(は)かせてはいけません。吐かせると食道とのどが2度、酸にさらされることになります。
水、あれば冷たい牛乳をコップ2~3杯飲ませ、酸を中和します。できれば、うがいをして口の中やのどの酸を洗い流します。
内視鏡の検査の結果、ブジー(棒状の器具)による狭窄部位の拡張や開腹手術が必要になることがあります。