金谷丹前(読み)かなやたんぜん

改訂新版 世界大百科事典 「金谷丹前」の意味・わかりやすい解説

金谷丹前 (かなやたんぜん)

長唄荻江節曲名。1753年(宝暦3)の作と伝えられる。作詞作曲者未詳。二上りの甘い感傷気分の満ちた古風な曲。丹前とは伊達(だて)風俗を表した語で,丹前男が傾城けいせい)のもとへ通う筋であるが,思う女を寝取られた男の淋しさ,迷いとほのかな嫉妬を含んだ曲である。初世荻江露友がこの曲の繊細な旋律にひかれ,自流に移し,今日では先行長唄より荻江節の代表曲となっている。地唄舞風のしっとりした振りがつけられている。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「金谷丹前」の意味・わかりやすい解説

金谷丹前
かなやたんぜん

長唄(ながうた)、荻江節(おぎえぶし)の曲名で、歌舞伎(かぶき)舞踊の一つ。長唄は、1753年(宝暦3)初演で、作詞者、作曲者とも不詳。現在は演奏されていない。荻江節では初世露友(ろゆう)が長唄から取り入れて以来、荻江の代表曲となっている。丹前姿の男が傾城(けいせい)のもとに通いくる道行と、女を寝取られた男の恨み言が歌詞の内容であるが、『古今和歌集』の大伴黒主(おおとものくろぬし)の和歌を冒頭に用いている。題名金谷は、歌詞の「今は金谷も入相(いりあい)の」からきており、静岡県榛原(はいばら)郡の地名で、東海道五十三次の川越宿場をさすものと思われる。調弦は二上り。テンポの遅い、しんみりした曲である。

[茂手木潔子]

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