傾城(読み)けいせい

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典「傾城」の解説

傾城
けいせい

美人の意,および遊女の意。漢書に美人を「一顧傾人城,再顧傾人国」と表現したのに基づき,古来君主の寵愛を受けて国 (城) を滅ぼす (傾ける) ほどの美女をさし,のちに遊女の同義語となった。浄瑠璃,歌舞伎の役柄に多く取入れられ,女方の基本の一つとされる。特に上方歌舞伎では『傾城浅間獄』『傾城壬生大念仏』など,「傾城」「契情」「けいせい」の字を外題につける習慣があった。歌舞伎舞踊では変化物に多く,立役が傾城を演じることで,意外性と芸の力を示したものと思われる。3世中村歌右衛門の『仮初 (かりそめの) 傾城』と2世中村芝翫の『恋傾城』 (『芝翫傾城』) が最も知られる。ともに長唄で,名称はうたい出しの文からとられた。前者は文化8 (1811) 年江戸中村座の『遅桜手爾葉七字 (おそざくらてにはのななもじ) 』の七変化の一つ。作詞奈河篤助,松井幸三,作曲杵屋六左衛門。後者は文政 11 (1828) 年同座の『拙筆力七以呂波 (にじりがきななついろは) 』の七変化の一つで,作詞2世瀬川如皐,作曲4世杵屋三郎助 (10世六左衛門) 。長唄の曲としては,ほかに数曲が伝わる。

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デジタル大辞泉「傾城」の解説

けい‐せい【傾城/契情】

《「漢書」外戚伝の「北方に佳人有り。…一顧すれば人の城を傾け、再顧すれば人の国を傾く」から。その美しさに夢中になって城を傾ける意》
絶世の美女。傾国
遊女。近世では特に太夫天神など上級の遊女をさす。
[補説]「契情」は当て字
[類語](1美人別嬪べっぴん美女麗人佳人かじん美形美姫びき尤物ゆうぶつ名花解語の花シャン小町マドンナ色女大和撫子美少女傾国/(2芸者芸妓芸子綺麗どころ左褄名妓美妓傾国半玉花魁おいらん

けい‐せん【傾城】

《「けいせい(傾城)」の音変化》遊女。
「―買うて、人のかねを盗み」〈浄・冥途の飛脚

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精選版 日本国語大辞典「傾城」の解説

けい‐せん【傾城】

〘名〙 「けいせい(傾城)」の変化した語。〔かた言(1650)〕
※浄瑠璃・冥途飛脚(1711頃)けいせん買ふて人の金を盗み、其のけいせん連れて走られたといふて」

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百科事典マイペディア「傾城」の解説

傾城【けいせい】

傾国とも。男子がその色香におぼれて城も国も顧みないほどの美女。転じて遊女の称。中国,春秋時代の呉王の愛姫西施(せいし)は傾城の美女として有名。

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歌舞伎・浄瑠璃外題よみかた辞典「傾城」の解説

傾城
〔長唄〕
けいせい

歌舞伎・浄瑠璃の外題。
演者
杵屋六左衛門(9代)
初演
文化8.3(江戸・中村座)

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世界大百科事典 第2版「傾城」の解説

けいせい【傾城】

遊女の漢語系別称語源は《漢書》に見える〈一顧傾人城 再顧傾人国〉のによる。この句から傾城とも傾国ともいう。ただし,原句は絶世の美女の形容であり,遊女ではなかったが,日本では平安時代から江戸時代まで遊女の別称として使われた。遊女などの類語との概念差異はないが,概して高級の公娼を指すことが多く,私娼に用いることは少ない。江戸時代の文学や芝居題名に多数使用されており,遊廓を傾城町と称した例は法令にも使われている。

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普及版 字通「傾城」の解説

【傾城】けいじよう(じやう)・けいせい

城を危うくする。絶世の美女。〔詩、大雅、瞻哲夫し を傾く

字通「傾」の項目を見る

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