縫い針、待ち針などを、危険のないように刺しておく裁縫用具。針山、針休めともいう。針が刺しやすい木綿や、メリンスなどの薄手毛織物を6センチメートルぐらいの正方形または円形に縫う。その中に針のさびを防ぐため、いりぬか、いりごまや油をしみ込ませた毛糸くず、綿(わた)、毛髪などを入れて、座ぶとんのようにつくる。古代から中国、朝鮮では針を収める金属、七宝(しっぽう)、象牙(ぞうげ)製などの針筒がつくられていたが、裁縫技術の導入とともに日本にも移入され、法隆寺には象牙撥鏤(ばちる)の装飾的な針筒が残されている。中世以後、針刺し帖(ちょう)といい、布や紙製で、左右に開いて中に針を収める型のものがあった。江戸時代には、女のだいじな道具として針箱が発達し、箱の蓋(ふた)や中箱に針山を取り付けたものがみられた。また一方を座ぶとんに敷き込む曲(まがり)型のくけ台の上端に丸くつくった針山をつけたものは、長く使われたが、第二次世界大戦以後ほとんど姿を消した。
[岡野和子]
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