針刺し(読み)はりさし

精選版 日本国語大辞典 「針刺し」の意味・読み・例文・類語

はり‐さし【針刺・針差】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 綿や毛髪などを布で包んで、裁縫用の針を刺しておくもの。はりやま。はりたて。はりぼうず。〔類聚雑要抄室町)〕
    1. [初出の実例]「針差(ハリサシ)の紅をぷつりと刺して」(出典虞美人草(1907)〈夏目漱石〉九)
  3. 厚紙などを折り、その中に針を並べて刺しておくもの。
    1. [初出の実例]「針指(ハリサシ)・針入・針やすめ・かけ針」(出典:浮世草子御前義経記(1700)四)
  4. はりばこ(針箱)

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「針刺し」の意味・わかりやすい解説

針刺し
はりさし

縫い針、待ち針などを、危険のないように刺しておく裁縫用具。針山、針休めともいう。針が刺しやすい木綿や、メリンスなどの薄手毛織物を6センチメートルぐらいの正方形または円形に縫う。その中に針のさびを防ぐため、いりぬか、いりごまや油をしみ込ませた毛糸くず、綿(わた)、毛髪などを入れて、座ぶとんのようにつくる。古代から中国、朝鮮では針を収める金属、七宝(しっぽう)、象牙(ぞうげ)製などの針筒がつくられていたが、裁縫技術の導入とともに日本にも移入され、法隆寺には象牙撥鏤(ばちる)の装飾的な針筒が残されている。中世以後、針刺し帖(ちょう)といい、布や紙製で、左右に開いて中に針を収める型のものがあった。江戸時代には、女のだいじな道具として針箱が発達し、箱の蓋(ふた)や中箱に針山を取り付けたものがみられた。また一方を座ぶとんに敷き込む曲(まがり)型のくけ台の上端に丸くつくった針山をつけたものは、長く使われたが、第二次世界大戦以後ほとんど姿を消した。

[岡野和子]

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