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鈴木博之 すずき ひろゆき

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デジタル版 日本人名大辞典+Plusの解説

鈴木博之 すずき-ひろゆき

1945-2014 昭和後期-平成時代の建築史家,建築評論家。
昭和20年5月14日生まれ。平成2年東大教授となる。21年青山学院大教授,22年博物館明治村館長。西洋建築史を専門とし,現代建築の評論家として知られた。文化財保護や東京駅舎の復元に尽力。著作に「建築の世紀末」,「建築の七つの力」(昭和60年芸術選奨新人賞),「東京の「地霊」」(平成2年サントリー学芸賞),「都市のかなしみ」など。平成26年2月3日死去。68歳。東京都出身。東大卒。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

鈴木博之
すずきひろゆき
(1945―2014)

建築史家。工学博士。東京都生まれ。専門は近代建築史、近代都市史。1968年(昭和43)、東京大学工学部建築学科卒業後、同大学工学系大学院博士課程に進み、1974年満期退学。東京大学工学部専任講師(1974)、ロンドン大学コートゥールド美術史研究所留学(1974~1975。イギリス政府給費留学生)を経て1978年東京大学助教授。1990年(平成2)より同教授(工学部建築学科。後に工学系研究科建築学専攻)。1993年にはハーバード大学客員教授(美術史学科)を務める。1997~1998年日本建築学会副会長、2000年より早稲田大学客員教授。
 鈴木の博士論文「ヴィクトリアン・ゴシック崩壊過程の研究」(1984)は近代の成立が建築においてどのようなかたちで現れたかを探り、イギリス近代建築の黎明期に成立し、やがて消えたビクトリアン・ゴシック様式に注目した。
 鈴木は19世紀のイングランド教会建築様式に影響を与えたA・W・N・ピュージンAugustus Welby Northmore Pugin(1812―1852)、ゴシック・リバイバル思想や運動に影響を与えたジョン・ラスキンをはじめ、当時の日本の工芸をイギリスにもち込んだクリストファー・ドレッサーChristopher Dresser(1834―1904)、日本に当時の建築思潮と建築教育を導入したジョサイア・コンドルら、ビクトリア朝のイギリス建築家たちに注目し、その活動と思想の詳細を日本とイギリスでの両方の活動から調べた。イギリスから日本へのベクトルだけでなく、逆に日本がイギリスにもたらした影響を伏線として詳細に調査し、中世思想の都市と産業、そして生活への展開としての田園都市、田園郊外住宅地までを論じたのである。
 ゴシック・リバイバルはストレートに近代建築につながらなかったデザインと建築の理論と思想である。鈴木は、当時の日本が求めた欧米列強の建築様式と、コンドルが携(たずさ)えてきたゴシック・リバイバル思想と理論には微妙な齟齬(そご)を生じていた、という。当時の建築家たちの議論には近代社会と文化に対する理論的限界があるだけでなく、明治期の日本の事情や建築家個人の抱える矛盾もあった。しかし、鈴木はこのような限界や事情に現代との共通性をみるのである。
 近代を迎えた激動の時代を生きた建築家には市井(しせい)の人々がもつ普遍的な夢や悩みもある。ビクトリア朝は栄光の時代であるが、同時に近代社会が抱え込むさまざまな問題を初めて示した普遍的な時代である。鈴木は、その時代とその時代の建築家のあり方に、現代日本の建築と都市のあり方を重ねるのである。
 鈴木は、その後の研究対象をビクトリアン・ゴシックやイギリスに留めず、江戸から明治、そして第二次世界大戦後へと時代が移るなかでの日本の都市空間の変貌(へんぼう)へと広げていく。土地の地霊(ゲニウス・ロキ)の喪失をキーワードに、日本の現代建築と都市の問題点と矛盾を読み解く作業である。鈴木は、建築は普遍的な存在ではなく、1回ごとに一つの場所に、個別的に構想され、設計され、建築される、とする。そこでは鈴木は歴史家として建築に対して距離をおくのではなく、建築の保存や街並保全の方法を積極的に探るアクティビスト(活動家)へと変貌する。これは鈴木がビクトリアン・ゴシックの建築家たちにみいだした、時代へのかかわり方、すなわち建築とデザインの理論構築はつねにその実証と実践とともにある、というスタンスである。
 おもな論文、著書には、「近代建築発生過程における装飾観の変遷」(修士論文、1971)、『建築の世紀末』(1977)、『建築は兵士ではない』(1980)、『建築の七つの力』(1984)、『夢のすむ家』(1989)、『日本の〈地霊〉(ゲニウス・ロキ)』(1990)、『建築家たちのヴィクトリア朝』(1991)、『ヴィクトリアン・ゴシックの崩壊』『ロンドン――地主と都市デザイン』(1996)、『現代建築の見かた』(1999)、『現代の建築保存論』(2001)など。
 おもな訳書としては、ジョン・サマーソンJohn Summerson(1904―1992)の『天上の館』Heavenly Mansions and Other Essays on Architecture(1963)、『古典主義建築の系譜』The Classical Language of Architecture(1963)、ニコラウス・ペブスナーほかによる『世界建築事典』A Dictionary of Architecture(1966)、ペブスナーの『ラスキンとヴィオレ・ル・デュク』Ruskin and Viollet-le-Duc(1969)、『美術・建築・デザインの研究1・2』Studies in Art, Architecture and Design(1980)などがある。2005年紫綬褒章(しじゅほうしょう)受章。[鈴木 明]
『『建築の世紀末』(1977・晶文社) ▽『建築は兵士ではない』(1980・鹿島出版会) ▽『建築の七つの力』(1984・鹿島出版会) ▽『夢のすむ家――20世紀をひらいた住宅』(1989・平凡社) ▽『建築家たちのヴィクトリア朝――ゴシック復興の世紀』(1991・平凡社) ▽『ヴィクトリアン・ゴシックの崩壊』(1996・中央公論美術出版) ▽『現代建築の見かた』(1999・王国社) ▽『現代の建築保存論』(2001・王国社) ▽『日本の〈地霊〉(ゲニウス・ロキ)』(講談社現代新書) ▽『ロンドン――地主と都市デザイン』(ちくま新書) ▽ジョン・サマーソン著、鈴木博之訳『天上の館』(1972・鹿島研究所出版会) ▽ジョン・サマーソン著、鈴木博之訳『古典主義建築の系譜』(1976・中央公論美術出版) ▽ニコラウス・ペヴスナー著、鈴木博之・鈴木杜幾子訳『美術・建築・デザインの研究』1・2(1980・鹿島出版会) ▽ニコラウス・ペヴスナー他著、鈴木博之監訳『世界建築事典』(1984・鹿島出版会) ▽ニコラウス・ペヴスナー著、鈴木博之訳『ラスキンとヴィオレ・ル・デュク――ゴシック建築評価における英国性とフランス性』(1990・中央公論美術出版)』

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