日本大百科全書(ニッポニカ) 「銀河衝突」の意味・わかりやすい解説
銀河衝突
ぎんがしょうとつ
2個以上の銀河が重力的に相互作用する現象。別名は銀河相互作用。最終的に銀河の合体に至ることもあり、その場合は銀河合体ともいう。質量が同程度の銀河どうしの合体はメジャー・マージャー、また銀河に衛星銀河が合体することをマイナー・マージャーとよぶ。
近傍の宇宙にある銀河のうち、約5%は2個以上の銀河が近接しているため、宇宙を眺めるときに衝突しているように見えるケースもある。実際に衝突しているかどうかは、衝突の影響で銀河の形状に特徴的な歪みが生じているかどうかを見たり、スペクトル(分光)観測をして二つの銀河がほぼ同じ距離にあることを見たりして確認する。
宇宙には1兆個以上もの銀河があるとされる。銀河の空間分布は一様ではなく、銀河の個数密度にはむらがある。銀河の個数密度が高い場所は銀河群や銀河団として認識され、それらが宇宙の大規模構造を形成している。したがって、銀河は個数密度の高い領域では互いの重力で引き寄せられ、相互作用する。ちなみに、銀河系はアンドロメダ銀河など数十個もの銀河からなる局所(局部)銀河群に属している。数十億年後には銀河系とアンドロメダ銀河などは相互作用し、最終的には合体して巨大な楕円銀河に進化していくと考えられる。
一般に、銀河は孤立系として誕生して進化したと考えられた時期があった。一方、近傍の宇宙にある銀河の数%は、2個あるいは複数の銀河が相互作用していることもわかっていた。しかし、それらは特異銀河として扱われ、銀河研究のメインターゲットとしては認識されていなかった。ところが、1980年代に入ると、銀河の進化は小さな銀河の種が複数合体して進化する、階層的構造形成シナリオがパラダイムとして受け入れられるようになった。そのため、銀河衝突(銀河相互作用)は銀河の進化において重要な役割を担っていると考えられるようになった。
銀河衝突は銀河の中心領域で激しい星形成(スターバースト)を誘発する。また、銀河中心核に存在する超大質量ブラック・ホールへガスを供給し、活動銀河中心核の発生をも誘発する。これら銀河中心部の活動性と銀河衝突の影響に関しては、まだ詳細な物理過程が不明であり、重要な研究課題となっている。
[谷口義明 2017年2月16日]
『谷口義明著『クエーサーの謎――宇宙でもっともミステリアスな天体』(講談社・ブルーバックス)』▽『谷口義明著『新・天文学事典』(講談社・ブルーバックス)』