改訂新版 世界大百科事典 「銀河中心核」の意味・わかりやすい解説
銀河中心核 (ぎんがちゅうしんかく)
galactic nucleus
銀河の中心部分にある差渡しが数百光年以下の領域で,電波や赤外線,紫外線,X線などの高エネルギー放射や可視光の強い集中を示す。銀河は,自分自身の万有引力によって寄り集まっている,恒星と星間物質とからなる孤立した力学系であるために,その中心は一般にはもっとも位置エネルギーの低い特異な点となっていて,物質も集中しやすい。大型の銀河にあっては,比較的容易に中心部分に大規模な質量の集中が生じ,さらにそこへ物質が引き込まれて位置のエネルギーを解放するため,高密度で活動的な核状領域を形成するものと考えられている。銀河を外から観察する場合には,核自体は銀河中央部の濃密な恒星系に埋もれているので,その恒星系内の質量分布や空間運動の異常から,核の存在を推定できることもあるが,多くの場合は,爆発的な活動現象に伴う高エネルギー放射や,異常励起による輝線スペクトルの検出によって認められる。大型楕円銀河のうち電波銀河として知られるもののほとんどは,活動的な中心核をもっていて,形態的にも,中心部分からの爆発の痕跡や高エネルギー粒子の噴出しと思われる青いジェットの認められるものが多い。クエーサーやBL Lac天体などの高エネルギー放射を放つ高光度の準点状銀河も,中心核の極度に発達している大型楕円銀河の一種ではないかと思われる。渦巻銀河は回転する円盤構造をもっているために,一般的に,発達した中心核をもちにくいと考えられているが,セイファート銀河と呼ばれるものは,準点状に青く輝く中心核を有し,スペクトル線の種類や広がり,高エネルギー放射の観測から,爆発現象の起こっていることが知られる。円盤構造をもつわれわれの銀河系やアンドロメダ銀河の中心部分にも中心核があって,小規模ながら,物質密度の強い集中や爆発現象のあることが知られている。中心核の正体はブラックホールと考えられ,それに引き込まれる物質が巻き込まれていく高温ガスの回転円盤や,その外側を取り囲む濃密な星とガスの系の不安定性によって,爆発現象が繰り返されると考えられている。顕著な中心核を示す銀河の代表的な例としては,M87,NGC1068,NGC4151,3C273などがある。
執筆者:小平 桂一
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報