形状が楕円形をしている銀河の一般的呼称で、1926年、ハッブルによって名づけられた。楕円銀河の回転運動は一般に小さく、その形状は個々の星の乱雑運動によって維持されている。ガスや暗黒星雲はほとんどなく、年齢の古い種族Ⅱの星のみから構成されているので色は赤い。質量は太陽質量の106倍程度の小さな矮小(わいしょう)楕円銀河から1013倍にも達する巨大楕円銀河までさまざまな大きさのものが存在する。おとめ座のM87星雲は巨大楕円銀河の代表例である。
1980年代になってから人工衛星の観測で、巨大楕円銀河は一般に強いX線を放出していることがわかってきた。X線の放出は、光で観測される大きさの数倍も広がった領域にわたっており、そのスペクトルの解析によって、数億度という超高温のガスからの熱放射であることがわかった。楕円銀河を構成している星々は、その進化する過程で大量のガスを星風として星の周辺部へ放出する。ガスを伴ったこれらの星々が楕円銀河内を毎秒1000キロメートルにも達する速度で乱雑運動しながらすれ違うとき、ガスは互いに激しく衝突して衝撃波で数億度にまで熱せられて、楕円銀河の周辺部に広がったためと考えられている。
楕円銀河は一般に銀河団中に多く存在しており、とくに銀河団の中心部にはひときわ巨大な楕円銀河が1ないし2個存在しているケースが多く、それらはcD型銀河とよばれている。これらの楕円銀河は渦状銀河に比べ数十倍も明るいため、数十億光年かなたの遠方にある銀河団内でも検出でき、銀河や銀河団の進化など宇宙進化論の研究にきわめて重要な天体となっている。
渦状銀河どうしが衝突・合体して楕円銀河になったと考えられるものが近年多数発見されている。楕円銀河の合体起源説である。銀河の合体で楕円銀河が形成されることは理論的にも示されており、楕円銀河の一部はこのようにして最近数十億年の間につくられたと考えられる。しかし、銀河内の星による元素形成の解析によると、楕円銀河の大多数は最初から楕円銀河として銀河形成時に渦状銀河と同時に形成されたとの説が有力である。銀河形成のとき、どのようなメカニズムで渦状、楕円の2種類の銀河に分化したかは、いまだ不明である。
[若松謙一]
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[分類]
銀河の分類は,1926年にハッブルによって提唱された形態分類が基本となっているが,銀河の明るさの中央集中度に基づいたヤーキス分類などもある。ハッブルの分類ではその見かけの形によって,楕円銀河(E),渦巻銀河(S),棒渦巻銀河(SB),不規則銀河(Ir)に大別される。楕円銀河は滑らかな輝度分布をもち,際だった内部構造を示さない。…
…渦巻状の磁場構造はわれわれの銀河系のほかM33,M51などいくつかの渦状銀河について知られているが,アンドロメダ銀河のように円環状の磁場をもつ例もある。楕円銀河のように星間ガスの希薄な銀河では磁場は検出されていない。宇宙磁場【祖父江 義明】。…
※「楕円銀河」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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