改訂新版 世界大百科事典 「銀河X線」の意味・わかりやすい解説
銀河X線 (ぎんがエックスせん)
galactic X-ray
1962年から63年にかけて天体から強いX線が放射されることが発見された。X線は空気の層に吸収されるので,これは初めはロケット,後には気球,さらに人工衛星によって観測されたものである。X線の源はわれわれの銀河系(天の川)のみならず銀河系の外,遠い外の銀河系,宇宙の果てに近いクエーサーなどにもあるが,観測されるX線のほとんどはわれわれの銀河系からくるものである。この銀河X線源は次のように分類されている。(1)X線星と呼ばれるわれわれの銀河系に属するX線天体,(2)超新星の残した星雲,(3)もっと近い,波長の長いX線を放射する星間空間の熱いプラズマ。なお,アインシュタイン衛星の観測によって,通常の星もそのほとんどは弱いが波長の長いX線を放射していることがわかっている。
X線星の正体は今日では中性子星,ブラックホールなど高密度星と通常の星との近接連星系だと考えられている。星から高密度星に流入するプラズマが,解放される重力エネルギーで温められ高温になってX線を放射する。
かに星雲がシンクロトロン放射としてX線を放射しているほか,超新星の残した多くの星雲はX線を熱放射している。星間空間のプラズマは過去に爆発した超新星のエネルギーによって高温に温められていると想像されている。
X線星は現在のところ次の三つに分類されている。(1)若い重い星と,強い磁場をもつ中性子星との連星で銀河系内ほぼ一様に分布し,その多くはX線パルサーとして観測される。(2)軽い晩期型の星と磁場を失っているように見える中性子星との連星で,銀河中心の方面から30度程度以内の銀河面に分布し,しばしばX線バーストと呼ばれる現象を見せる。(3)星とブラックホールとの連星。はくちょう座X-1,コンパス座X-1,GX339-2などがそれかと想像されるがブラックホールであるということは確かめられていない。
執筆者:小田 稔
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報