狂言の曲名。太郎冠者狂言。成長した息子の元服に際し,黄金作りの刀を差させてやろうと思った主人が,太郎冠者に,鎌倉へ行き〈金(かね)の値(ね)〉をきいてこいと命ずる。太郎冠者はそれを〈鐘の音(ね)〉と勘違いして,鎌倉の寺々をめぐり歩き,鐘楼堂の鐘をついて音色を聞きくらべてくる。帰宅してその旨を主人に報告し,主人に叱責されるが,即興的に鎌倉の寺々を回った様子を謡い舞って機嫌をとり結ぶ。各流にあり,シテは太郎冠者だが,大蔵流の台本ではアドに主人と仲裁人が登場するのに対し,和泉流では主人だけ。同音異義語を利用した取り違えの構想を軸に,寺の鐘をつくしぐさと同時に鐘の音の擬音を演者自身の声で表現する狂言独自の趣向が眼目。おとずれる寺の名と音色も流派によって異なり,大蔵流は五大堂-グヮン,寿福寺-チン,極楽寺-コン,建長寺-ジャンモンモン,和泉流は寿福寺-ジァンモンモン,円覚寺-パーン,極楽寺-ジャグヮン,建長寺-コーンモンモンとなっている。
執筆者:羽田 昶
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
狂言の曲名。太郎冠者(かじゃ)狂言。主人は太郎冠者(シテ)に鎌倉へ行って金(かね)の値(ね)を聞いてこいと命じる。金の値を鐘の音と聞き違えた太郎冠者は、鎌倉に着くと有名な寺々を回り、それぞれ鐘をついて音のぐあいを確かめる。建長寺の鐘がもっとも冴(さ)えたよい音だったので、急ぎ帰って主人にその旨を報告する。あきれた主人は役たたずの太郎冠者に腹をたて、追い出すが、仲裁人のとりなしで、太郎冠者は主人の機嫌を直そうと、鐘の音を聞いて回ったようすを即興で謡い舞ってみせ、主人にしかられて終曲する。以上は大蔵流の筋で、和泉(いずみ)流では仲裁人は出ない。寺々の鐘の音を擬音で演じ分けるところが見どころで、擬音を役者の声で表現する狂言演技の特色が十分活用されている。
[林 和利]
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