日本大百科全書(ニッポニカ) 「関越トンネル」の意味・わかりやすい解説
関越トンネル
かんえつとんねる
東京都練馬区と新潟県長岡市を結ぶ関越自動車道の、群馬県みなかみ町(水上インターチェンジ)と新潟県湯沢町(湯沢インターチェンジ)間に位置する高速道路トンネル。全長は下り線が1万0926メートル、上り線が1万1055メートルで、道路トンネルとしては日本最長である(2012)。
下り線は1977年(昭和52)工事に着手し、1985年10月供用開始したが、みなかみ町の月夜野(つきよの)インターチェンジから関越トンネル間は片側一車線の暫定二車線で開通した。上り線が1986年に二期工事として着手し、1991年(平成3)10月供用開始したことで、全区間が4車線化された。上・下線の中間には地質調査や下り線トンネル建設のため先進導坑が掘られ、供用後は避難用として転用したトンネルがある。両側の本線からは350メートルおきに連絡口が配置され、火災等の緊急時には当該トンネルから避難できる。こうした避難坑は、関越トンネル以降に建設された自動車用長距離トンネルにおいて一般化されるようになった。
トンネルは谷川岳(1977メートル)の標高700メートル付近を北北西方向に貫通しており、東京側坑口はみなかみ町阿能川(あのうがわ)に、新潟側坑口は湯沢町土樽(つちたる)に位置している。平面線形(路線の平面的な形状)は、両坑口付近に曲線区間を設け中央部は直線となっている。縦断勾配(こうばい)は、下り線では東京側坑口からほぼ中間点までは1%の上り勾配となり、ここを頂点として新潟側坑口まで0.5%の下り勾配である。上り線では東京側坑口から3.5キロメートルまでは1.4~1.65%の上り勾配となり、ここを頂点として新潟側坑口まで0.45%の下り勾配である。
トンネルの掘削は、下り線では発破(はっぱ)を用い、鋼製支保工と矢板(やいた)を併用し、必要断面を一度に掘削する全断面掘削工法で、上り線では、コンクリート吹付けとロックボルト併用による全断面NATM(ナトム)(New Austrian Tunneling Method)工法により施工した。長大トンネルのため排気ガスの対策が必要であり、2か所の立坑(万太郎立坑、谷川立坑)で送排気を行うとともにトンネル内の汚れた空気を浄化し、再利用する電気集塵(しゅうじん)機を組合せる、世界でも類例のない換気方式を採用した。
トンネル内では各種防災設備が整備され、ハイウェーラジオが放送されているとともに、事故・火災・故障車両発生などの緊急時に備え、上下線ともトンネル入口には信号機が設置されている。トンネル内の最高速度は時速70キロメートルに規制されている。
[吉川大三]