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闇の力 やみのちからVlast' t'my

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

闇の力
やみのちから
Vlast' t'my

ロシアの作家 L.トルストイ戯曲。5幕。 1887年執筆。 90年の愛好家仲間での試演を除いて,95年まで上演禁止。初演は 95年 10月 16日ペテルブルグのマールイ劇場だが,18日にはアレクサンドリンスキー劇場でも上演された。実際にあった事件を題材とし,ロシア農村の暗さと農民の無知をリアリスティックに描いた作品。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

闇の力
やみのちから
Власть Тьмы Vlast'T'm 

ロシアの作家L・トルストイの戯曲。1886年発表、88年パリで初演。五幕からなり、作者の処女戯曲ではありながら、代表作に擬されている。実際のトゥーラ県の犯罪事件にヒントを得て書かれ、無知と貧困の支配する当時の農村における近親相姦(そうかん)、私生児殺害をテーマとし、人間を誘惑、堕落させる闇の力と、同じ人間の魂のなかにある神の力との、神の力にあらがう闇の力の粗暴さを描く。闇とは、人間の本能のきわめて破壊的なもの、諸悪の根源ともいうべき性欲そのものをさす。題名の「闇の力、あるいは爪(つめ)が一本罠(わな)にかかっても、小鳥の命はもうおしまいだ」が示すように、作者は、人間がいかに弱い者であるかということについて、過ちが過ちを生み、ついには抜き差しならぬ破滅に陥る過程を如実に写し出し、しかしながら究極には、汚濁に満ちた魂ではあろうとも、浄化、救済せずにはおかぬ神の力の偉大さをたたえる。厳しい検閲を経て発表された初版は3日間で25万部を売り尽くしたと伝えられる。[中村 融]
『米川正夫訳『やみの力』(岩波文庫)』

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