荷電粒子が物質中を通過したとき、その通過した道筋(飛跡)に沿って単位長さ当りに荷電粒子が失った平均のエネルギー損失を、その物質の阻止能という。荷電粒子のエネルギー損失のほとんどは物質中の電子とのクーロン相互作用によるもので、分子・原子を電離し、あるいは電子をより高いエネルギー準位に励起することに費やされる。これらの現象は、荷電粒子のエネルギーや物質の密度などで決まる確率に基づく統計的現象で、個々の荷電粒子のエネルギー損失は、その平均値の周りに分布した値をとる。阻止能は、陽子やα(アルファ)粒子などの重い荷電粒子に対しては、物質を構成する原子の原子番号すなわち電子の個数と、単位体積当りの原子の個数に比例する。また100万~1億電子ボルトの重い荷電粒子に対しては、ほぼその運動エネルギーに反比例し、電荷の二乗と質量に比例する。
[西村奎吾]
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…荷電粒子放射線が物質中に入射すると,放射線の持つエネルギーは,入射荷電粒子と物質中の電子や原子核との衝突によって失われる。このとき,荷電粒子が物質中を進む経路に沿っての単位長さ当りに失われる放射線エネルギーの割合を阻止能stopping powerと呼ぶが,阻止能は入射放射線のエネルギーの変化とともに変化する。この入射放射線の全飛程にわたっての阻止能の平均値をLETと呼ぶ。…
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出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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