上皇が所有する皇室領。平安前期に天皇譲位後の御所として成立した後院(ごいん)には、荘園などが付属し、歴代の天皇に伝えられたが、平安後期に院政が始まると、院政を行う上皇である治天(ちてん)の君(きみ)がこれを所有した。また上皇の知行国である院分国(いんぶんこく)は、私領化が進み、分国主の領国となる場合があった。院政期には院領荘園が増加したが、重要なのは、御願寺(ごがんじ)領と女院(にょいん)領とである。御願寺は天皇・上皇・皇后などの祈祷・菩提のための寺院であり、御願寺領が施入された。御願寺領の例としては、法勝寺(ほっしょうじ)をはじめとする六勝寺(りくしょうじ)領、安楽寿院(あんらくじゅいん)領などがあげられ、新熊野(いまくまの)社領、新日吉(いまひえ)社領などの神社領もこれに準ずる。女院領は女院が父の上皇から譲られるなどして成立した。鳥羽上皇から皇后美福門院(びふくもんいん)、さらに皇女八条院に伝えられた八条院領は、その例である。持明院統(じみょういんとう)と大覚寺統との分立後は、八条院領は大覚寺統、長講堂(ちょうこうどう)領は持明院統という風に、院領は皇統の重要な経済的基盤となった、
[上横手雅敬]
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