陽復記(読み)ようぶくき

改訂新版 世界大百科事典 「陽復記」の意味・わかりやすい解説

陽復記 (ようぶくき)

1650年(慶安3)冬,伊勢豊受(とゆけ)大神宮(外宮)権禰宜度会延佳(わたらいのぶよし)の撰した書。翌年板行。2巻。後期伊勢神道の代表的な一書。上巻は天神七代,地神五代,天孫降臨,三種神器,内外両宮鎮座由来等について記し,下巻では神道儒教,また仏教との関係,両宮の祭神,遷宮などについて問答体で記している。前期伊勢神道諸書に比し,きわめて通俗平易な文体で記すなかに,易の理を入れ説いている。著者延佳は伊勢神道の再興者として知られ,本書は後光明天皇の叡覧に供している。1717年(享保2)豊受大神宮権禰宜度会(喜早)清在は,本書中の重要事項について自説を加えた《陽復記衍義(えんぎ)》を記している。《続々群書類従》神祇部,《太神宮叢書,度会神道大成》後篇所収。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「陽復記」の意味・わかりやすい解説

陽復記
ようふくき

江戸時代の神道家度会 (わたらい) 延佳著。2巻。慶安3 (1650) 年脱稿,稿を補って宝永7 (1710) 年刊行。伊勢神道と神儒一致の立場から,日本固有の神道,惟神道を経とし,陰陽五行,易の思想を緯として,一家の神道説を問答体で述べたもの。人間の生活すべてに神道があるとして,正直,誠慎をもって五倫の道を実践することをすすめる。書名は慶安庚寅の冬,一陽来復の頃に著わしたことによる。

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世界大百科事典(旧版)内の陽復記の言及

【度会延佳】より

…外宮権禰宜で,出口延佳ともいう。著書には《陽復記》,《神宮秘伝問答》,《神宮続秘伝問答》,《中臣祓瑞穂鈔》,《神代巻講述鈔》があり,校訂板行した書に《鼇頭(ごうとう)旧事紀・古事記》および《士仏参詣記》などがある。また豊宮崎文庫を創設し神官祠官の子弟教育にも努力したが,1670年(寛文10)11月の大火で多年収集の書物および校訂の書冊いっさい烏有に帰した。…

※「陽復記」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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