一陽来復
陰が極まって陽にかえること。陰暦十一月または、冬至をいう。また、冬が去り春が来ること。新年が来ること。転じて、悪い事が続いたあと、ようやく好運に向かうこと。
[活用] ―する。
[使用例] 一陽来復を希う人生の落武者が稲荷のまわりにしがない生計を営んで[坂口安吾*古都|1942]
[使用例] あの病気のつねでいっそう明敏になにかと語り、この冬いっぱいも無精をして引きこもっていれば、春にはそれこそ一陽来復でまた元気になるよ、といつもの人なつっこい微笑を見せはしたが[野上弥生子*秀吉と利休|1962]
[解説] このことばは、易学では、十月は陰の最盛期で陽がなく、陰暦の十一月、冬至の日に一つ陽が来てまたもとに復していくところからいいます。
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いちよう‐らいふく イチヤウ‥【一陽来復】
〘名〙
① 陰が窮まって陽にかえること。陰暦一一月または、冬至をいう。《季・冬》
※丱余集(1409頃)下「喩若二群陰剥尽、一陽来復一」
※俳諧・増山の井(1663)一一月「一陽の嘉節 十月は無陽の月也。冬至に一陽来復(ライフク)せり」
② 冬が去り春が来ること。新年が来ること。
※太平記(14C後)四「潜龍(せんりょう)は三冬に蟄(ちっ)して一陽来復(フク)の天を待つ」
③ 悪い事が続いたあと、ようやく好運に向かうこと。
※明徳記(1392‐93頃か)中「一陽来復の天を待、先非を悔て歎申されしかば」
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一陽来復
いちようらいふく
万物の生成を陰と陽の二気に分ける考え方から、冬至をいう。夜を陰、昼を陽として1年を立春から大寒までの二十四節気に分けると、冬至が陰の極点となる。したがってこの日から陽がふたたび増してくることになる。古くはこの日を一陽来復または一陽嘉節(かせつ)として祝った。冬至と11月1日が重なる朔旦(さくたん)冬至などは、よりめでたいことであった。こうしたことから、春が巡ってくることや、めでたいことがふたたびくることを一陽来復というようになった。
[佐々木勝]
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デジタル大辞泉
「一陽来復」の意味・読み・例文・類語
いちよう‐らいふく〔イチヤウ‐〕【一陽来復】
1 《易で、陰暦10月に陰がきわまって11月の冬至に陽が初めて生じることから》陰暦11月。または、冬至。《季 冬》
2 冬が去り春が来ること。新年が来ること。「一陽来復の春」
3 悪いことが続いたあと、ようやく物事がよい方に向かうこと。「一陽来復を願う」
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一陽来復
陰が陽に返ること。凶事の後には必ず吉事が回ってくる。
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いちようらいふく【一陽来復 yī yáng lái fù】
冬至のこと。また,春の到来や凶事が去って吉事がふたたびもどって来ることをいう。〈一陽生〉ともいうように,《易経》の復(ふく)の卦(か)の最下段に,一陽(
は陽,
は陰のシンボル)が復(ふたた)び芽生えたことにもとづく。この逆が〈一陰生〉の夏至,《易》でいえば姤(こう)の卦である。この冬至の日,旧中国では仕事を休み,徹夜したり赤豆の粥を作ったり酒宴を設けたりして,万物のよみがえりを祝った。【三浦 国雄】
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