日本大百科全書(ニッポニカ) 「隠れ熱中症」の意味・わかりやすい解説
隠れ熱中症
かくれねっちゅうしょう
熱中症に特有の初期症状を伴わずに進行する高温障害。脱水症状の一歩手前の「隠れ脱水」もほぼ同義に使われることが多い。熱中症は、高温環境下で生じる急性疾患の総称であるが、のどが渇く、多量の汗をかくなどの初期症状が顕著であるためすぐにそれと判断できる。しかし、隠れ熱中症はこうした症状のないまま進行し、重症化してから気づくことも多い。高温環境下だけでなく、室内や自動車の中、また夜間であっても発症する可能性がある。小児や高齢者ではとくに発汗による体温調整が円滑にできないため、注意が必要である。また、高血圧治療で減塩食を続けている人にも、脱水が起きやすい。隠れ熱中症の徴候としては、手や指先の冷感、手足のしびれのほか、指の爪を押したとき、ピンク色に戻るのに3秒以上かかる、などがあり、これは体内の水分不足から循環血液量が減少し末梢(まっしょう)への血流量が不足することが原因である。また皮膚の水分量も減少するため、手の甲の皮膚を引っ張り元に戻るのに3秒以上かかる、舌が乾燥し表面がザラザラと赤黒くなるなどの症状も伴う。水分は自覚のないまま皮膚からも蒸発しているため、のどの渇きをおぼえたときは既に脱水状態が進んでいると考えたほうがよい。隠れ熱中症、隠れ脱水の予防には、のどが渇く前から水分を補給する習慣をつけ、場合によってはナトリウムなどを含む経口補水液を摂取することが重要である。
[編集部]