体の水分(体液)が欠乏していろいろな症状があらわれた状態をいう。体液には水分のほかにナトリウムイオンNa⁺,カリウムイオンK⁺,塩素イオンCl⁻などの電解質が含まれているので,単に水分の欠乏による症状のみではなく,それらの電解質の欠乏のために起こるさまざまな症状があらわれる。
脱水症をおこす原因としては,乳児では下痢(乳児下痢症)や嘔吐によるものが多い。乳児ではそのほか,発熱のために発汗がひどいときや,口内炎ができてミルクや水分を飲まなくなって脱水症状になってしまうことがある。幼児,学童でも,ひどい下痢,嘔吐が続けば脱水症となる。また,アセトン血性嘔吐症(周期性嘔吐症,自家中毒症)で,水分も受けつけずに嘔吐をするような重症例では脱水症におちいる。真夏,炎天下で遊んでいた子どもが急にぐったりとして高熱を出すのは日射病として知られているが,その根底には発汗による体液の欠乏つまり脱水症がある。気管支喘息(ぜんそく)の子どもも呼吸困難のために何も飲まなくなり,また呼吸によって失われる水分量もかなりの量となるので脱水症となることがある。
脱水症になると,ぐったりとして元気がなくなり,乳児では機嫌が悪く,ぐずってばかりいたり,ぼんやりとしてあやしても笑わなくなり,眠りがちとなる。これは意識障害のあらわれであり,そうした状態となったときは早く治療をしなければならない。高度の脱水症では発熱,痙攣(けいれん)がおこり,昏睡状態となることもある。外見上も,口唇や舌がひどく乾き,顔色は青く,目がおちくぼんだ特有の顔付きになる。成人では,体がだるく,筋肉痛(手足がつる),口渇がひどく,脈拍が速くなり,頭痛,吐き気などがおこり,ひどい場合は意識がなくなる。
治療は,不足している体液(水分と電解質)を点滴で補給することがまず第一である。吐き気がなければ水分を飲ませればよい。その場合,白湯だけよりも電解質(塩分)が含まれているほうがよく,スポーツドリンクなどを利用するのもよい。子どもと同様,老人は体液が欠乏すると脱水症状をおこしやすいから,真夏やテニス,ゴルフ,登山などをしてひどく汗をかいた場合,早めに水分と塩分の補給を心がけておくほうが安全である。
→嘔吐 →下痢
執筆者:藪田 敬次郎
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
体内の水分(体液)が不足した状態をいう。体液にはナトリウムイオンなどの電解質が含まれており、水欠乏と同時に電解質の不足も生ずる。脱水症は低張性、高張性、等張性の三つに分類される。体液が喪失するとき、水分よりも電解質のほうが多く失われると低張性(ナトリウム欠乏性)脱水症となる。逆に水分の喪失のほうが電解質よりも多ければ高張性(水欠乏性)脱水症、水分と電解質が同じ割合に失われると等張性(混合性)脱水症となる。生体はつねに不感蒸散によって水分が失われており、嘔吐(おうと)や下痢、意識障害などで水分の経口摂取が不十分な状態では高張性脱水症になりやすく、糖尿病や副腎(ふくじん)不全のように尿から慢性的に電解質が失われると低張性脱水症に陥りやすい。また、もっともしばしばみられるショック、外傷、熱傷などで体液が大量かつ急激に失われる状態では等張性脱水症となる。これらの鑑別診断は血漿(けっしょう)ナトリウム値や浸透圧の測定により行われる。測定値が高ければ高張性脱水症であり、低ければ低張性脱水症である。測定ができない場合は臨床症状などから推定する。高張性では口渇感や尿量減少などが著しく、低張性では血圧低下、頻脈、神経症状などが著しい。治療はいずれも、水分と電解質の不足量を輸液によって補給する。
なお、小児科ではとくに水分の欠乏のみでなく、電解質のバランス失調や酸塩基平衡の失調などの体液異常も、小児疾患の危険信号として重視されており、日常的に輸液が行われている。また、小児の水分欠乏量は体重から判定されている。短期間に健康時の体重の3%前後の減少があれば軽度、7%前後では中等度、10%前後では高度の脱水症とみられ、15%以上では死の近いことを意味する。
[山口規容子]
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