身体から失われた水分・電解質が、腸内で迅速に吸収され補給されるように配合された飲料。経口輸液、経口補液ともいう。略称ORS。熱中症などに伴って生じる脱水症状に対する治療手段の一つとして用いられる。世界保健機関(WHO)もORSを用いた治療法を経口補水療法(ORT:oral rehydration therapy)として提唱し、ORSに含まれるブドウ糖、ナトリウム、カリウムなどの成分比率をガイドラインとして示している。
脱水症状は、下痢や嘔吐(おうと)、発熱などの症状が持続する場合にも起こり、1971年、インドのバンガオンにあった難民キャンプでコレラが大流行した際にORTが功を奏し、死亡率を激減させたことが知られている。このことは医学雑誌『ランセット』The Lancetにおいて「20世紀最大の医学上の進歩」とも評され(1978)、以後世界中でORTが注目され始めた。ORSは緊急時には水に食塩(ナトリウム)とブドウ糖(炭水化物)を溶かすことで容易に入手できるため、ユニセフ(国連児童基金)とWHOによる合同プロジェクト(rehydration project)においては、そのウェブサイトでORSの使用方法のみでなく、手作りのORSのレシピ、ORTの実績などを紹介し、ORTの啓発を行っている(ユニセフは多くの開発途上国で粉末状のORSパッケージの配布を継続的に行っており、手作りのORSのレシピは、このパッケージの入手ができないときのみ活用することを勧めている。手作りのORSは安価で容易につくれる反面、組成が安定しないこと、保存がむずかしいこと、カリウムやマグネシウムなどが配合されないために、下痢による脱水症を十分には補正できないなどの問題点がある)。日本では、医療用としてORSが用いられているだけでなく、消費者庁から個別評価型病者用食品として認可を受けたORSが市販されている。日本救急医学会の「熱中症診療ガイドライン2015」では、熱中症の予防・治療に推奨する飲料として「塩分と水分の両者を適切に含んだもの。現実的には市販のORSが望ましい」として熱中症へのORTの実施が推奨された。その他、高齢者の水分補給やスポーツ選手の水分補給などに、幅広くORTの考え方が応用されつつある。
[編集部 2017年9月19日]
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