雁鴨池 (がんおうち)
Anap-chi
韓国,慶尚北道慶州市月城にある新羅時代の王宮付属の園池。《三国史記》文武王14年(674)の条に,〈宮内に池を穿(うが)ち山を造り,花草を植え珍禽奇獣を養う〉とあるのが,雁鴨池にあたる。1970年代に護岸施設や池の内部が発掘調査された後,史跡公園として復元,公開された。東西200m,南北180mの範囲内でかぎ形の池がつくられ,池の内部には,南・北に二つの大きい島と,中央に一つの小さな島を配置している。池畔北東には,築山があり,巫山十二峰にたとえられる。池の内部からは丸木舟や金銅製はさみ,仏像など2万余点の,多岐にわたる遺物が出土した。とりわけ,調露2年(680)銘のある宝相華文の塼(せん)は,年代的規準資料として重要である。池岸の西側から北側にわたる楼閣跡や建物跡は臨海殿と呼ばれるが,文武王14年の雁鴨池の造成と関連するものである。
執筆者:西谷 正
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
かりがもいけ【雁鴨池】
韓国南部のキョンサンプクト(慶尚北道)キョンジュ(慶州)市内にある、新羅の文武王の時代に建てられた、臨海殿という離宮の人工池の遺構。慶州駅から国立慶州博物館へ向かうバス通り沿いにあり、半月城から徒歩5分ほどのところにある。1975年の発掘調査の後、庭園が再建された。広大な庭園には、大小3つの小島がある大きな雁鴨池がある。新羅の王侯貴族は、ここに舟を浮かべて遊んだといわれている。この遺跡から出土した2万点の発掘物は、国立慶州博物館に収蔵・展示されている。◇「アナプジ」などとも読む。
出典 講談社世界の観光地名がわかる事典について 情報
雁鴨池
がんおうち
Anap-chi
韓国,慶州月城の北東にある統一新羅時代の別宮 (臨海殿) の苑池。新羅文武王 14 (674) 年の着工で,大小3つの築島をもつ広大な人工苑池。新羅滅亡後土砂に埋り荒廃したが,1975年の発掘調査で遺構の全貌が明らかにされた。 1.26kmに及ぶ池の周囲には護岸の石築遺構があり,30cmほどのブロック状花崗岩を整然と積上げている。池の南と西の護岸には臨海殿などの建築址があり,池底から船遊びに用いた木船,仏菩薩像,金銅製鋏などが多数出土し,往時の宮廷生活の様子がうかがわれる。
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
世界大百科事典(旧版)内の雁鴨池の言及
【塼】より
…百済では,南朝梁の濃厚な影響をうけた蓮華文や唐草文の塼が作られ,一種の画像塼とみられる扶余の窺岩面外里廃寺の各種文様塼は,百済独特の様式を形成している。統一新羅時代には,唐の影響をうけた華麗な文様塼が発達しており,慶州雁鴨池の宮殿に使われた宝相華文塼などは,量産化による退化現象が顕著な唐代の文様塼よりもすぐれた製品になっている。この時期の塼塔が各地にのこっており,新羅において大幅に塼が利用されている状況がうかがわれる。…
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出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」