(読み)いえども

精選版 日本国語大辞典 「雖」の意味・読み・例文・類語

いえ‐どもいへ‥【雖】

  1. 〘 連語 〙 ( 動詞「いう(言)」の已然形に接続助詞「ども」のついたもの。格助詞「と」に続けて用いられる ) 逆接の確定条件または仮定条件を表わす。…ではあるけれども。たとい…でも。…だとて。…たとて。
    1. [初出の実例]「法身は常住なりといへども、常見に堕せず。復断滅すと雖、亦断見には非ず」(出典:西大寺本金光明最勝王経平安初期点(830頃)三)
    2. 「絵にかける楊貴妃のかたちは、いみじき絵師といへども筆限りありければ、いとにほひすくなし」(出典:源氏物語(1001‐14頃)桐壺)

雖の語誌

( 1 )万葉の訓では「雖」に「ど」「ども」を当てている。また、「雖有」を「ありといへど」とよんでいるように、漢文訓読では「といへど」「といへども」「といふとも」の訓は早くから固定したといえる。その「いふ」は実質的意味の薄いものである。
( 2 )「雖」の訓読は、平安時代には仮定条件を表わす場合には「といふとも」、確定条件を表わす場合には「といへども」と使い分けられていたが、のちに、「といへども」に固定化された。この結果、「といへども」は仮定条件を表わす場合にも用いるようになった。


いう‐ともいふ‥【雖】

  1. いう(言)とも

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

普及版 字通 「雖」の読み・字形・画数・意味


17画

[字音] スイ
[字訓] いえども

[説文解字]
[金文]

[字形] 会意
口+隹(すい)+虫。口は(さい)。祝を収める器の形。隹は鳥占(とりうら)。祈って神託を求める。これによって示される神意は唯。受諾を意味し、「しかり」の意。それで神聖に関する記述のときに、唯(惟・維)を発語としてそえる。虫は蠱(こ)。呪詛(じゆそ)の意。この祈りに呪詛が加えられているので、唯に対して停止条件が加えられ、逆接態となって「いえども」となる。〔説文〕十三上に「蜥蜴(せきえき)(とかげ)に似て大なり」と虫の名とするが、その用義例はない。ほとんど「然りと雖も」の意に用いる。

[訓義]
1. いえども。
2. これ、ただ。
3. すなわち、あに、いわんや。

[古辞書の訓]
名義抄〕雖 イフ・イヘドモ・ツクス・タトヒ 〔字鏡集〕雖 ツクス・タトヒ・イヘドモ・コレ・イフ

[熟語]
雖是・雖然

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