改訂新版 世界大百科事典 「雨に唄えば」の意味・わかりやすい解説
雨に唄えば (あめにうたえば)
Singin' in the Rain
ジーン・ケリー,スタンリー・ドーネン共同監督・振付によるアメリカのミュージカル映画。1952年製作。トーキーの出現によって変貌する1927年(最初のトーキー映画《ジャズ・シンガー》が公開された年である)のハリウッドを舞台に,映画製作の内幕(悪声のスターが失脚し,美声の一少女が幸運をつかむ等々)が,〈ジャズ・エージ〉の風俗とともに描かれ,単純な〈ボーイ・ミーツ・ガール〉形式のミュージカル・コメディとはひと味異なるくふうが凝らされている。主演のジーン・ケリーが,恋を得た喜びに,どしゃ降りの夜更けの街角でずぶぬれになって歌い踊りまくるナンバー〈雨に唄えば〉は,クレーン撮影を駆使した画面の躍動感とともに,〈MGMミュージカル〉の数々の名場面の中でも白眉とされ,その後いろいろな映画に引用されたり,パロディ化されたりしている(例えば《時計じかけのオレンジ》1971)。〈MGMミュージカル〉を育てた名プロデューサー,アーサー・フリードがみずから作詞した名曲の集大成としても知られる。封切当時よりも年とともに評価が高まり,〈映画史上のベスト・テン〉といった催しには必ず選出される名作の1本になっている。
執筆者:岡田 英美子
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報