振付(読み)フリツケ

デジタル大辞泉 「振付」の意味・読み・例文・類語

ふり‐つけ【振(り)付(け)】

舞踊などで、音楽や歌詞に合わせてする動作を考案し、演技者に教えること。

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精選版 日本国語大辞典 「振付」の意味・読み・例文・類語

ふり‐つけ【振付】

  1. 〘 名詞 〙 芝居・舞踊などで、歌曲に合わせて行なう所作(しょさ)を考案して演者に教えること。ふりをつけること。また、その人。振付師
    1. [初出の実例]「ふり付の心の届く衣がへ」(出典:俳諧・武玉川(1750‐76)初)
    2. 「一人にして作劇家となり俳優となり〈略〉衣裳方となり振附(フリツケ)より隈取化粧まで自ら之を為すに到っては」(出典文学者となる法(1894)〈内田魯庵〉四)

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改訂新版 世界大百科事典 「振付」の意味・わかりやすい解説

振付 (ふりつけ)

人間の肉体の運動の連続を規定し,それによって思想または感情を創作的に舞踊として表現すること。これを専門的に行う者を振付者または振付師という。英語ではコレオグラフィーchoreographyというが,これはもともとは舞踊の記譜法を示す言葉で,1700年にフランスのフイエRaoul-Auger Feuillet(1660ころ-1710)とボーシャンPierre Beauchamp(1636-1705)が自らの記譜法を〈choréographie〉と称して発表したのに由来する。その後も舞踊記譜法はさまざまなものが考案され振付が記録された。なかでもロシアのステパノフVladimir Ivanovich Stepanov(1866-96)の楽譜を併用した舞踊譜,ハンガリー生れのラバンラバノーテーション,イギリスのベネッシュRudolf Benesh(1916-75)とその妻Joan B.(1920- )によるベネッシュ・ノーテーションはその実用的価値が高い。

 振付は舞踊の分野で初めから独立した職分とはなっていなかった。古来より舞踊は作法などと不可分のものとして伝承され,それがなんらかの偶然によって変化しながら,民族舞踊,僧院における舞踊,宮中における舞踊などの流れになり,生活の一部となっていたのである。したがって舞踊をとりまとめ演ずる責任を負う者は,その世界の長老格であった。18世紀ころはバレエの振付もバレエ団の長老格であるメートル・ド・バレエがやっており,当時のパリ・オペラ座のメートル・ド・バレエで,《舞踊とバレエについての手紙》(1760)の著者として知られるノベールも,この本の中でメートル・ド・バレエを振付者と同じ意味で使っている。しかしノベールの時代はすでに振付そのものの価値が認められており,その後さらにいっそうその評価が高まってくる。それは劇場が市民によって維持されるようになると,振付者の仕事いかんによって劇場とその付属バレエ団の存続の可否が決まるようになるからである。さらに近代になると創作に従事する者の全般的な地位が向上し,振付は特殊な才能を要する職分としての価値をますます高めることとなる。

 振付の実際は,(1)テーマの選定,(2)形式と構成の決定,(3)スタッフ,キャストの指名,(4)肉体の動きの創造(狭義の振付はこの部分のみを指す),(5)スタッフによる側面的効果の必要性の検討,(6)総合的調整作業,という手順で進められる。演劇における台本作家と演出家を一つにしたような仕事が課せられることが多く,振付者は芸術的才能と同時に人間関係を統率する才能をももつことを要求されている。
執筆者:

歌舞伎の初期には役者が自分で振り付けるか,舞踊を得意とする役者がつとめていたが,元禄(1688-1704)のころからおもに下級役者が振付師としてあたることになり,宝暦期(1751-64)には,役者や囃子方を兼ねた振付師が,長唄や浄瑠璃の正本にその責任を記すようになる。しかし振付師の立場は役者に従属する補助的なものであった。振りを考案するとともに振りを伝承することも重要な仕事であることから,宝暦期に活躍した中村伝次郎西川扇蔵藤間勘兵衛らは市井の踊師匠も兼ね,舞踊の流派はこのころから形成されるようになる。歌舞伎舞踊所作事)の振付は,詞と曲につかず離れずが理想とされ,佐渡嶋長五郎の《しよさの秘伝》に,〈振は文句に有,文句に生(しよう)なき時は,品(しな)をもってす。又文句なく,節にてのばす時は,拍子にのる。なすわざは所作成が故に,振に誠を本とす。何によらず其所作柄の心を忘るべからず〉とある。
執筆者:

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「振付」の意味・わかりやすい解説

振付
ふりつけ
choreography

舞踊用語。バレエ,オペラ,ミュージカルをはじめとする舞踊芸術において,舞踊を創作あるいはアレンジすること。作品の各部分の踊り手を選定し,踊り手の動き,ステップの順序などを振付師が組立てる。古典バレエなど演劇的内容をもつ舞踊では,主題や物語にそって振付が行われ,筋をもたない純粋舞踊では,新しい動きの創造やアレンジが中心となる。また新しい音楽による作品の場合は,振付師と作曲家が綿密に打合せ,リズム・パターンや音の長さまで作曲家に指示されることもある。振付の最も初歩的な形態は民俗舞踊の単純な円形,直線などにみられ,芸術舞踊では対角線,正方形,長方形,円形,半円形,螺旋形など幾何学的形態が発達した。これらは 17世紀の宮廷バレエの主要素をなしたが,やがてドラマがバレエに取入れられると (→バレエ・ダクシオン ) ,より豊かな動きによる表現が追求された。 19世紀に入ると爪先立ち (ポアント) の技法が取入れられ,さらにアクロバティックな振付も出現。 20世紀初めにはモダン・ダンスが生れ,それまでの形式を排して独創的な振付が行われて,そのほかの舞踊にも多大な影響を与えた。振付はかつて記録がむずかしく,模倣によって踊り手から踊り手へと受継がれねばならなかったため,失われるものも多かったが,R.ラバンの舞踊記譜法によって完全な形で残されるようになった (→舞踊譜 ) 。アメリカなどでは系統的な大学教育もなされている。しかし実際には,おもに観察・経験によって振付師が学び,踊り手は振付師の動きを模倣して学ぶのが一般的である。

振付
ふりつけ

按舞ともいう。日本舞踊で振りは文句にありといわれるように歌詞に合致する動きをつけること。しかし,伴奏音楽が変化するにつれてこのような傾向はなくなりつつある。

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世界大百科事典(旧版)内の振付の言及

【作曲】より

…それ以前から伝統的に用いられていた言葉として〈節付〉〈手付〉があるが,その基本的な概念は歌詞に〈(ふし)〉を付けたり,さらに楽器奏法としての〈手〉を付けるというように様式的に拡大していくことが眼目となっている。その延長上には〈振付〉をして舞踊にまでひろげる場合も含まれている。他の類語としては〈作調〉〈調〉があげられる。…

※「振付」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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