化学辞典 第2版 「電子帯スペクトル」の解説
電子帯スペクトル
デンシタイスペクトル
electronic band spectrum
幅をもった吸収部分からなる電子スペクトルをいう.単に帯スペクトルということもある.個々の幅のある吸収部分をバンドまたは吸収帯という.バンドとは多くの吸収線が群がっているという意味である.電子スペクトルは電子がその基底状態から種々の励起状態へ遷移することによって現れるが,多原子分子では,振動状態や回転状態が各電子状態に付随しているので,これらが組み合わさって一つの電子励起状態はいくつかの振動準位と回転準位が幅をもって分布することになる.そのため線スペクトルとならず,帯スペクトルとなる.なお,回転状態の関係するスペクトルは,溶液や液体,固体では観測されない.また,ごく低温度にしたスペクトルでは,バンドに微細構造が現れる.これは基底状態における振動励起状態が消滅する結果である.帯スペクトルは振動状態と電子状態の結びつきによって現れるので,バイブロニック(vibronic)スペクトルともいわれる.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報