改訂新版 世界大百科事典 「霊猫香」の意味・わかりやすい解説
霊猫香 (れいびょうこう)
主要な動物性香料の一つ。シベットcivetともいう。アジア(ミャンマー,スマトラ,スラウェシ,ジャワ,ボルネオ,フィリピン,台湾)またはアフリカ(エチオピア,セネガル,ギニア,アビシニア)地方に生息するジャコウネコ(霊猫)科のシベットの性器の近くにある香囊に生じる分泌物。雌雄ともシベットを分泌する。しかし雌のそれはにおいは強いが不純物が多いので,おもに雄から採取する。シベット採取のための飼育は,現在アフリカ産に限られているが,高温・多湿下,良質の餌(牛乳,卵白)を与えて,1回に7~8g,年間40回程度採取する(年間採取量約300g)。シベットの清冽な香気の主体はシベトンcivetoneで,ムスクと同様,大環状ケトンであるが,ムスクよりはその香気はデリケートであるとされている。高級香料の調香用に,また保留剤として重用され,古くから強精・強壮剤としても用いられている。近年,同種の芳香物質としてシベタールなどが合成されている。
執筆者:内田 安三
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報