改訂新版 世界大百科事典 「シベット」の意味・わかりやすい解説
シベット
civet
地上生で四肢が比較的長く,吻(ふん)がとがった食肉目ジャコウネコ科ジャコウネコ亜科のうちの2属5種の哺乳類の総称。アフリカと南アジアの森林,草原に分布。体長45~95cm,尾長30~48cm,体重2~20kg,前・後足とも5指で,つめは半ば引き込めうる。胴には黄褐色の地に黒色の縞か斑点があり,首の下面を横切る顕著な黒帯と白帯がある。背筋に,逆立てることができる〈たてがみ〉状の長毛を備えたジャコウネコ属ViverraのアフリカジャコウネコV.civetta(サハラ以南のアフリカ),インドジャコウネコV.zibetha(ネパールから中国南部・マラヤまで),マレージャコウネコ(ジャワジャコウネコ)V.tangalunga(マラヤ,スマトラ,ボルネオ,フィリピン)などと,そのような〈たてがみ〉のないヒメジャコウネコ(コジャコウネコ)Viverricula indica(インド・スリランカから中国南部まで,台湾からスマトラまで分布。ジャワ,バリ,マダガスカルなどに移入されたものは野生化)がある。ともに,ふつうは水に近い森林に単独ですみ,夜行性で昆虫,カエル,ヘビ,果実などを食べるが,ときにウサギなどを捕食することがある。繁殖期は不定で,年に2~3回,1腹1~4子を生む。雄の肛門の前方には袋状の大きな包皮囊または会陰囊(麝香(じやこう)腺)があり,ここから分泌される液は香料の原料(霊猫香)として珍重され,これを採取するためにしばしば飼育される。
→ジャコウネコ →霊猫香
執筆者:今泉 忠明
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報