デジタル大辞泉 「青べか物語」の意味・読み・例文・類語 あおべかものがたり〔あをべかものがたり〕【青べか物語】 山本周五郎による連作短編小説。昭和35年(1960)「文芸春秋」誌に連載。浦安をモデルとする架空の町「浦粕」を舞台に、昭和初期の漁師町の人間模様を描いた作品。昭和36年(1961)、文芸春秋読者賞に選ばれたが受賞辞退。 出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例
改訂新版 世界大百科事典 「青べか物語」の意味・わかりやすい解説 青べか物語 (あおべかものがたり) 山本周五郎の小品集。1960年(昭和35)1~12月号《文芸春秋》に連載。1928年から1年余,江戸川河口の漁師町浦安に仮寓した山本は,青いべか舟(貝や海苔を採る一人乗りの平底舟)で読書や素描を楽しみ,病苦,失恋,失職,貧困,孤独を慰めた。この間に見聞した特異な浦粕(浦安)世界の人情・風物を33の短編に練りあげ,小説のエッセンスだけを抽出しようと試みた作品。人間の原形質を剔抉(てつけつ)し,海苔すき小屋や川辺の葦にまで登場人物と等しい人格を付与した作物として,山本の最高の文学的到達とされるばかりでなく,日本近代文学が従来もたなかった傑出した収穫と評価する向きが少なくない。執筆者:木村 久邇典 出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報