海産・淡水産の藻類を原料とした食品。海苔とよばれる食品にはいくつかのものがある。青海苔、浅草海苔、ふりかけ海苔、海苔の佃煮(つくだに)、刺身のつまのオゴノリやフノリ、海藻サラダのトサカノリなどがあり、いずれも水生の藻類である。
青海苔は、緑藻植物アオサ科の海藻アオサ、アオノリ、ヒトエグサなどを乾燥させて板状にしたり、細片にして市販されている。細片のものはそのまま「ふりかけ」として利用するほか、魚粉類を主材とした「ふりかけ」に香味を添えるために加えたり、七味唐辛子(しちみとうがらし)の七味の一つにも欠かせない。青海苔の香気はジメチルサルファイドを多量に含有するためで、ミネラルやビタミンにも富むが、栄養価よりも香りがたいせつである。
浅草海苔は、紅藻植物ウシケノリ科のアサクサノリやスサビノリの類を養殖し、板状に乾燥させたものであるが、他の近縁種(アマノリ属類)が混入することも多い。板海苔、焼き海苔、味付け海苔、佃煮などにして市販されている。板海苔は軽く焼いて握り飯、巻きずし、しょうゆをつけて飯といっしょに食べるなど、日本人の食生活には欠かせない食品の一つである。主成分は糖質とタンパク質で、おのおの40%近くを占めているが、消化率が低いのでカロリー源としての栄養価は期待できない。しかしビタミンAに富み、カルシウム、リン、鉄などが多く、うま味と香りの重要な食品である。うま味の成分はグルタミン酸、香りの成分はジメチルサルファイドである。黒色の板海苔を加熱すると紅紫色色素フィコエリスリンと青色色素フィコシアニンが破壊され、葉緑素クロロフィルの色が強調されて緑色に変わる。板海苔をローラーで熱して焼き海苔、味をつけたローラーの間を通して味付け海苔をつくる。
海苔の佃煮はアマノリ類にみりん、しょうゆなどを加えて煮つめたもので、長期保存で風味がうせた浅草海苔の利用法にもなる。市販品はアオサ科のヒトエグサを原料としたものがほとんどである。アサクサノリが内海に育つのに対し、外海の岩礁上に生える野生種を総称してイワノリといい、この佃煮は香味が強く野趣があって喜ばれる。伊豆の「井田海苔」、越前(えちぜん)の「黒海苔」「雪海苔」などが知られている。
海藻以外では、川や沼沢に生育するカワノリやスイゼンジノリが知られている。カワノリは浅草海苔のように板状にして市販されるが、特定の河川にだけ産するので高価である。スイゼンジノリはなまのものを湯通ししてから三杯酢、吸い物種、刺身のつまなどにする。干し海苔は水にもどしてから同様に利用する。どちらも鉄分、カルシウムに富み、浅草海苔ほどの風味はないが貴重な食品である。
刺身のつまに使われるエゴノリ、オゴノリ、フノリは、いずれも紅藻植物で、食品としての利用は古い。またエゴノリ、オゴノリは寒天の材料として利用される。
近年、海藻サラダとして利用している海藻は、日本ではトサカノリ、ハワイではカギケノリが多い。ともに紅藻植物に属し、本来は鮮紅色であるが、蒸気で熱して青緑色にしたり、また白く脱色して、栄養価よりも見た目に美しい海藻サラダとして食卓を楽しませる。
[新崎盛敏]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
出典 シナジーマーティング(株)日本文化いろは事典について 情報
出典 日外アソシエーツ「動植物名よみかた辞典 普及版」動植物名よみかた辞典 普及版について 情報
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