日本大百科全書(ニッポニカ) 「エッセンス」の意味・わかりやすい解説
エッセンス
えっせんす
essence
植物の種々の部位、たとえば、花、果実、種子、葉茎、根茎、樹皮などの香りのもとになる物質を抽出して得られる精油essential oilを、50~60%のエチルアルコール、あるいは他の食用油脂などに溶解したもので、食品の着香の目的にのみ使われる液体香料である。これらの精油の化学的成分は、抽出するもとの植物、部位によって異なり、エーテル、エステル、アルデヒド、テルペン類、ラクトン類などが混在、結合している、たいへん複雑な組成のものが多い。
エッセンスには、天然の植物体の精油をアルコールに溶かした天然エッセンスと、これら精油の成分を化学的に分析し、人工的に合成したものをアルコールに溶解してつくった合成エッセンスがある。天然の植物体から精油を抽出する方法には、圧搾法、浸出法、蒸留法があり、植物体の特徴にあわせて最適な抽出法が選定されている。たとえば、果物の精油は圧搾法、バニラビーンズなどは浸出法、ミントや香草スパイス類は蒸留法が用いられている。天然のエッセンスには、バニラ、アーモンド、オレンジ、レモン、ストロベリー、メープル、ミント、アニスなどがあり、合成エッセンスには以上のほかバナナ、コーヒー、チョコレート、ピーチ、パイナップル、メロンなど、実に多くの種類がある。
[齋藤 浩]