青島ビール株式公司(読み)ちんたおびーるかぶしきこんす

日本大百科全書(ニッポニカ) 「青島ビール株式公司」の意味・わかりやすい解説

青島ビール株式公司
ちんたおびーるかぶしきこんす

中国のビール会社。英語ではTsingtao Brewery Co., Ltd.と表記する。中国山東省の港湾都市である青島が本拠地。中国資本のビール会社のなかでは販売と輸出で業界の首位にたつ。青島ビール第一工場、第二工場、第四工場、楊州(ようしゅう)ビール工場、麦芽工場、青島ビール実業開発公司、青島ビール広発実業公司を所有している。

 1903年、青島ビールの前身となる青島ビール株式会社が英独合弁で設立、ヨーロッパの技術で建造された中国最初のビール工場であった。青島ビールは1906年にドイツのミュンヘンで開かれた博覧会で金賞を受賞。1916年から自社製品以外に日本のアサヒビールキリンビールの生産を始めたが、第二次世界大戦後の1947年に青島ビールに生産を限定し、ヨーロッパ風の伝統と質を守りながら生産量を拡大していった。1963年には中国の第一次全国ビール品質評定大会で唯一金賞を獲得して「国家銘酒」の評価を受けるなど数々の賞を受けた。1991年には外資を導入し、中外合資青島ビール第二有限公司を設立している。1993年に青島ビール株式公司と改称。同年、香港(ホンコン)と上海(シャンハイ)の証券取引所に株式上場。香港上場(H株、香港上場の中国本土企業株)は中国企業第1号であった。1995年末時点で、国内株(A株、国内個人投資家向けの人民元株式)のうち44.4%を青島国家所有資産局が所有。1995年時点で青島ビールは全中国のビール市場のシェア2.6%を占めていたが、1993年に日本の伊藤忠商事・アサヒビールのグループが中国の大手ビール会社、北京(ペキン)ビールと煙台(えんだい/イエンタイ)ビールの2社を買収して中国のシェア3.7%、年間50万リットル強を占有することになり、市場制覇の競争が激しくなった。このため青島ビールは、1997年に総額2億2000万元を投じ、2000年に総生産量140万トン、国内市場占有率7%達成を目ざして設備更新を行った。1997年、アサヒビールとの間に合弁会社深圳(しんせん/シェンチェン)青島朝日有限公司」を設立。新工場は廃水処理設備など環境保全と景観に配慮し、沿岸部主要都市への供給体制を整えた。

 2002年、バドワイザーBudweiserで有名なアメリカのビール大手会社、アンハイザー・ブッシュ社Anheuser-Buschが青島ビールの株式の27%を取得して提携した。アサヒビールとは2008年に煙台ビールへの共同出資などを通じて提携がさらに深まっていたが、2009年2月にアンハイザー・ブッシュ・インベブ社(ベルギーのインベブInBevがアンハイザー・ブッシュを2008年11月に買収して成立した世界最大のビールメーカー)から、アサヒビールが青島ビールの株式19.99%を買い受けて資本提携関係となり、役員の派遣を受けるなど国際競争に備えた。約50か所の生産拠点をもち、62の国と地域へ輸出。2007年の全世界での販売量は505万キロリットル、中国での市場占有率は13%であった。

[上川孝夫]

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