静摩擦ともいう。面上に置いた物体に力を加えて面に沿って動かそうとするとき,それを妨げる抵抗を静止摩擦という。物体には,加えた力の面に沿う方向の分力P と同じ大きさで逆向きの力 (静止摩擦力) F が接触面から加わる。P が増大するのに応じて,これと等大のF も増大するが,P の増大がある限度 P max をこえると,平衡が破れて物体は動きはじめる。この極限平衡におけるF の最大値を最大摩擦力 F max という。接触面からは,摩擦力F のほかに,物体を面にめりこませないよう働く垂直抗力N が物体に加わり,これらの合力 R=F+N を面の抗力という。摩擦の法則によれば,Fmax の大きさ F max はN の大きさ N に比例して F max =μN である。μを静止摩擦係数といい,その値は接触面の種類と状態に関係する。極限平衡において Rmax ,つまり Fmax+N がN となす角 θ を摩擦角といい,μ= tan θ の関係がある。接触面を静かに傾けていくとき,水平面との傾角が摩擦角 θ をこすと物体は滑りだす (→滑り摩擦 ) 。転がる物体でも,加えた力の接触点に関するモーメントがある上限値をこえなければ転がりださない。この極限平衡の状態では転がり摩擦による最大の回転モーメントが垂直抗力に比例する。