興奮していない細胞の内部には、通常、外部に対してマイナス60~90ミリボルトの電位差があり、これを静止電位または静止膜電位という。細胞の内部は、外部に比べてK+の濃度が高くNa+の濃度が低い。細胞膜を形成している脂質の膜は、イオンを通過させないため、それだけでは、その両側には電位差は生じない。しかし、細胞膜には何種類もの条件によって特定のイオンを通過させるイオンチャンネルといわれる膜タンパク質があり、その状態によって細胞内外の電位差が決まっている。静止状態で細胞内の電位が外部に対してマイナスに保たれているのは、K+イオンチャンネルの透過性が比較的高いためである。神経細胞や筋細胞などの興奮性細胞では、膜電位が変化すると電位依存性Na+チャンネルが開き、細胞内部が一時的にプラスの電位となる活動電位が発生する。各種のイオンチャンネルは、基本的に共通した分子構造をもつサブユニットが集まって、イオンを通過する孔(ポア)を構成する巨大分子である。感覚上皮、腺(せん)上皮などを挟んだ両側にも、静止状態で一定の電位差があり、静止電位とよばれる。
[村上 彰]
…ニューロンの興奮伝導の能力はその細胞膜の性質(半透膜)と結びついている。 一般に細胞においては,それぞれの細胞の細胞膜の性質によって,その内部環境と外液との間にそれぞれの細胞に特有な大きさの電位差(静止電位resting potential)がある。興奮していないニューロンでは,細胞内液のカリウムイオンK+濃度は細胞外液のそれよりも高く,ナトリウムイオンNa+濃度は細胞外液のほうが高い。…
…細胞やミトコンドリアなどのような細胞内小器官は,生体膜で囲まれており膜電位を生じている。生きている細胞ではすべて細胞膜を介して細胞の内外の間に電位が観察されるが,これを静止電位resting potentialと呼ぶ。細胞の内外には一般にイオンの分布に大きなかたよりがある。…
※「静止電位」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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